5.2 事業による影響の見通しと保全対策案
5.2.1事業による影響要因
ダム事業が生物の生息環境に影響を与える要因は、各開発区域で以下に示すものがあげられる。
(1)湛水城(ダムサイト周辺を含む)
- 調査時 ボーリングによる騒音、振動、植生の改変
- 施行時 湛水域の樹林の伐採による現存植生の消失
工事廃水の流出土砂・建設機材などの運搬、工事による騒音・振動、人の出入り
- 供用後 貯水による渓流の消失、ダムサイト・ダム湖の出現
(2)土捨場
- 調査時 ポーリングによる騒音、振動、植生の改変
- 施工時 土捨による、既存の耕作地・植生の消失、土砂の流出
土砂・建設機材などの運搬、工事による騒音・振動、人の出入り
- 供用後 新たな開放域の出現(完成後の姿は未定)
(3)原石山
- 調査時 ポーリングによる騒音、振動、植生の改変
- 施工時 樹木の伐採・掘削による現存植生の消失・地形の改変、土砂の流出
土砂・建設機材などの運搬、工事による騒音・振動、人の出入り
- 供用後 法面の出現(完成後の姿は未定)
(4)付替道路、機能補償林道
- 調査時 ポーリングによる騒音、振動、植生の改変
- 施工時 樹木の伐採、切土・盛土による現存植生の消失、地形の改変、土砂の流出
土砂、建設機材などの運搬、工事による騒音・振動、人の出入り
- 供用後 交通による騒音・振動、夜間走行時の照明、ヘッドライト
(5)ダム下流域
- 施工時 ダムサイト工事による廃水の流出
- 供用後 水量・水質の変化
5.2.2 事業による見通しと保全対策案
上述したダム事業による影響要因は、調査時、工事中、供用後にわたって直接的または間接的な影響が及ぶこととなる。これまでの調査結果から簗川ダム周辺には豊かな生物相が育まれていることが明らかになっており、クマタカをはじめとする動植物の保全対象への影響を最小限にするために、適切な保全対策を実施していくことが望まれる。
表 5.2.1に事業による影響の見通しと保全対策について保全対象ごとに整理した。
また、ダム事業は広範囲にわたるため、各事業区域ごとに保全対策を実施することが重要である。表5.2.2には事業区域別に影響による見通しと保全対策案を整理した。
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