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2016年12月定例会 一般質問

2016.12.12 発言者 いせ志穂
貧困対策について

(1) 相対的貧困の理解

(2) 生活保護受給の条件

子どもの貧困対策について

(1) 市の現状と取り組み

(2) 学校に通うことでかかる経費

(3) 学習支援

(4) 切れ目のない支援

(5) 高校中退

TPPについて
PPPについて

   
 早いもので2016年も師走を迎えました。世界的には、6月には英国のEU離脱の国民投票、先月のアメリカ合衆国大統領選挙と、これまで先進国が推し進めてきたグローバル化が頓挫した年として記憶されるのかもしれません。今後の流れがどうなっていくのか、未だはっきりとはしておりませんが、主要先進国の中でも大きな力を持つ両国の方針転換は全世界に少なからぬ影響を与えることでしょう。選挙を含む国民投票は、その社会を映し出す鏡です。規模の大小はありますが、同様の問題を日本でも抱えていると私は考えますので、具体的な質問に入る前に少しこのことに触れたいと思います。

 2つの投票で勝利した陣営が主張していたことは、移民が、あるいは他国が仕事を奪っているということでした。また、巨額の税金が他国のために使われているという主張も共通しています。これらの主張の中には事実誤認や意図的としか思えないほどの誇張が含まれていると報道されています。しかし、彼らの主張は「経済市場を開放すればするほど、生活が貧しくなっている」と感じている多くの人達に支持されました。

 英国・合衆国のGDPは、リーマンショック以降順調に伸びています。にも関わらず、生活苦を感じる人が増えているのは、格差の拡大によるものです。全世帯を所得の大きさで10階級に分類した時、最も豊かな層と最も貧しい層の所得比が、英国では13.8、合衆国では15.9にものぼります。収入の不平等を示すジニ係数は2000年代後半に英国が40.0、合衆国が45.0ですが、1990年代後半と比較するとそれぞれ7ポイント、9ポイントも上昇しています。子どもの教育や新たな投資に資金が回せないため貧困が固定化してしまうことや、中間層から貧困に落ち入る人が増えています。この状況をなんとかして欲しいと考える人達が今回の結果をもたらしました。

 私が不安に思うのは、このような意識が排外主義や、異なる文化を持つ人への差別へとつながっていくことです。健全な経済成長は市場の拡大によってもたらされます。そのためには、国内外に関わらず購買力を持つ人が増えることが必要です。だからこそ政治の安定と格差の是正が必要なのですが、排外主義や差別はそれに逆行する行為です。長期的に見た場合、自国の経済の悪化を招き、国民に今以上の生活苦をもたらすという悪いスパイラルをもたらしかねません。英国や合衆国の問題は今まで行われてきたグローバル化が、ある特定の人達だけに利益をもたらすものであることに原因があります。この構造を変えない限り本質的な解決は訪れません。

 日本のジニ係数を見ると1990年代後半に31.48、2000年代後半に37.6と、やはり大きく上昇しています。それと同時に在日外国人への差別発言を公然と行う団体が勢力を拡大するなど、両国と同様の傾向が見られます。このような傾向が盛岡市民を分断することのない様、注意を払わなければなりません。市長を先頭にした盛岡市職員は、大震災の際も、先日の台風被害の際も、率先し支援を行われました。困難な状況の方々に寄り添い、助け合いを行う姿勢に共感しております。盛岡市のすべての施策においてこの姿勢を貫くことが、私たちに迫りつつある危機を回避する大きな力になることをお話しした上で、質問に入ります。

 まず貧困対策について質問いたします。

 8月17日、NHKニュース7で経済的に困難な女子高校生が紹介され、パソコンが買えないためキーボードだけでタイピングの練習をしていること、希望する学校に進学できないことなどが映像入りで放送されましたが、彼女の部屋にアニメグッズやイラスト用のカラーペンなどが写り込んでいたために「貧困ではない」「捏造」などという批判が巻き起こりました。これは、衣食住に事欠く「絶対的貧困」と、その国における平均的な所得の半分未満の所得で暮らしている「相対的貧困」の混同から起こった出来事です。日本で「貧困」と言った場合、その多くは「相対的貧困」です。政府の定義では、可処分所得が単身者で約122万円、2人世帯で約173万円、3人世帯で約211万円、4人世帯では約244万円未満の世帯が相当し、2010年時点で16%の日本国民がこの水準にあたります。日本で6人に1人が貧困という実感をお持ちでしょうか?相対的貧困はとても見えづらく、また、誤解されやすいものです。

 2000年代の半ば頃から「自己責任」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。「生活保護受給者たたき」や、最近では病気の人に対してすら「自己管理できずに医療保険を食いつぶしている」という意味の仄めかしまで見かけるようになりました。今回の事件でも同様のものを感じます。私が最も問題だと感じたのは、現職国会議員がSNS上でこの騒動を助長するかのような書き込みをしたことです。たとえ意図的でなくとも、一個人、それも高校生に対する憎悪を煽ることに荷担してしまったのではないでしょうか。二度とこのようなことが起きないように、市民の理解を広めなければなりません。「相対的貧困」に関する盛岡市の解釈と市民理解を浸透させるための方法についてお知らせください。

 今年2月、全国の生活保護受給者の実人員は2,166,381人で人口に対して1.7%です。相対的貧困率が16%であることを考えるととても少なく感じます。生活保護の水準で暮らしているのに制度を利用しない理由について、お分かりのことがあれば教えてください。

 私が今まで聞いた中では「自家用車を所有したいので生活保護は申請しない」と言う方が多いと感じています。現在、公共交通が網羅されていない地方都市に於いて自家用車は贅沢品ではなく、生活必需品に近いものだと思います。特に働いている場合や子育て期間にはそう言えるのではないでしょうか。自家用車の所有は条件によって認めていると聞いていますが、盛岡市では何人の方に許可されていますか。認めている場合と認めない場合について、その条件をできるだけ具体的にお示し下さい。

 次に問題を抱える子どもへの施策について伺います。

 まず、子どもの貧困に関わってお聞きします。

 盛岡市の子どもの貧困の現状についてお知らせください。8月議会では、県立大学とのひとり親家庭に関する共同研究について10月頃に発表できるとのことでしたがその内容についてもお願いします。

 小中学校の要保護及び準要保護児童の実数をお知らせください。高等学校等就学支援金の受給者数もお願いします。また、就学援助費の支給は児童扶養手当のように「まとめ支給」でしょうか。

 私の下の子が高校を卒業して2年弱ですが、小学校、中学校、高校と進むにつれ学校からの集金額がどんどん高額になっていったのを覚えています。今は小学校、中学校、市立高校で、学校運営のために保護者が負担している私費はどのくらいでしょうか。その内容を教えてください。金額は学校によって違いますか。違うのであればその最低額と最高額を小学校、中学校、高校別にお知らせください。この金額や内容を決定しているのはどなたでしょうか。

 ドリルなどの副教材や工作・家庭科の材料費など、個人所有とすることで保護者が負担しなければならないのは、教育予算の現状を考えれば、現実的には仕方のないことかもしれません。しかし、公費と比較すると私費は使い勝手の良いものだと思います。公費で支払えるものは出来得るかぎり公費を利用するべきです。学校運営での私費利用について、金額の上限や目的などのルールは決まっていますか。

 同様に制服やクラブ活動にかかる経費などについてはどうなっているでしょうか。これらについては、複数のひとり親家庭の方から負担が大変だとお話しを聞いたことがあります。教育委員会としてある程度の配慮がされているのかどうかをお知らせください。

 生活困窮者自立支援事業で行っている学習支援について伺います。現在までの実績をお聞かせください。対象になっている児童の参加率や参加の傾向などもお教え頂ければと思います。

 私は平成28年度予算審査特別委員会で、子どもたちの「生き方モデル」を形成するためや学習習慣の定着のために、支援の対象を小学生まで広げるべきではないかと質問をいたしました。答弁は「参加者が増えてくれば、将来的に年を下げていくやり方もあるかもしれない」という主旨でしたが現在はどうお考えでしょうか。学習のつまずきも、早い段階でフォローした方が効果的だと思います。来年度からの実施をご検討頂けませんか。

 学校での子どもの貧困対策についていくつか伺ってきましたが、これ以外のことで教育委員会での取り組みがありまでしょうか。お知らせください。

 平成29年度から子ども青少年課、子育て安心課、母子保健課から構成される子ども未来部が新設されると発表されました。今までは庁内連携で取り組むというお話でしたが、今回の改変に至った経緯をお知らせください。

 子どもに係る施策は、庁内のみならず多くの機関との連携を必要とするものが多いため、連携強化につながる組織再編は歓迎するものです。よく「子どもへの支援は切れ目のない形で行わなければならない」と言われますが、支援の連続性を阻害するものとして進学があげられます。特に小学校入学時は、主たる担当が保健福祉部から市教育委員会へ、高校入学時には市教育委員会から県教育委員会へと移動することになりますので、貧困や虐待がある場合や障がいや疾病を抱えている場合、また、いじめや不登校などについても、丁寧な引き継ぎが必要です。伴走型支援の場合は、関係機関の担当者でケース会議を開くことが多いかと思いますが、学齢期の子どもの場合、どのような形で行われているのでしょうか。概要をお教えください。また、このような引き継ぎが必要とされる子どもは盛岡市全体で年間何人くらいいるのかお知らせください。

 教員研修について伺います。先ほどお話しした「子どもが抱える問題」の中で貧困と虐待については、社会と家庭に係る比重が大きいと言いますか、指導という側面が小さく、学校が苦手とする課題と思います。今まで何度かお話しをして来ましたが、生活困窮者の中には家計管理が充分に出来なかったり、極端な偏食や約束の時間を守れないなど一般的な生活から逸脱してしまう人がいます。これは悪意があってやっているわけではなく、毎日の生活に追われる暮らしを続けてきたために、生活の中で学習することが出来なかったからだと思います。

 また、虐待は、衝動的・過敏行動的・反抗的・破壊的な行動を起こす「愛着障害」という心理的影響を子どもに及ぼすことがあります。つまり一言で言ってしまうと、貧困や虐待に晒されている子どもは問題行動が多いのです。その問題行動が何故起きているかを見極めなければなりません。

 しかし残念なことに被虐待児は親を庇い、虐待を認めようとしない子どもが多いと聞きます。ある程度年長になってからも深刻な虐待が発見されないのは、子どもがその事実を必死で隠すからです。先ほどお話ししましたが相対的貧困も「見えない貧困」です。ある程度踏み込まない限り、子どもの生活状況は解らないことが多いです。だからこそ周りが気をつけていないと、このような子どもたちは「我が儘な子ども」「困った子ども」として対処されてしまう可能性があります。教職に従事している方々の多くは、貧困や虐待に接した経験がない方が大半でしょう。また、最近の傾向として教師が生徒の家庭に踏み込みづらい世の中になっていることも、このような子どもたちへの対応を躊躇う理由のひとつになっていると思います。全ての教員に研修の必要性を感じます。2014年6月、内閣府の子どもの貧困対策に関する検討会が発表した「大綱案に盛り込むべき事項について(意見の整理)」の中にも教員研修の必要性が記されていますが、盛岡市ではどうなっていますか。実施状況や内容についてお知らせください。

 質問の冒頭で合衆国の状況について話しましたが、もう少し付け加えたいと思います。ローランド・フライヤーハーバード大学経済学部教授によれば、合衆国における失業や雇用上の不平等はスキルレベルの低い人に起こりやすい、つまりどの学校に行ったかでその後の将来が決定づけられやすくなっており、雇用政策だけで改善をするのは不可能だとのことです。日本でも同様だと考えます。

 現在、高校への進学率は97%を超えており、ほとんどの子どもたちが高校に通っています。そのため、16歳から18歳までの子ども施策は高校生を対象としたものとなり、長期休学や退学した場合、支援の狭間に落ちてしまう可能性があります。2013年に高校を中退した子どもは全国で3,509,571人中、59,923人で中退率は1.7%です。盛岡の状況はどうなっていますか。中退の理由も含めてお知らせください。また、中退した子どもたちのその後はどうなっていますか。この年代の子どもたちに対する支援は、成人に対するものとは異なった専門性が求められる場合があります。まして中退の理由如何によっては、複雑な問題を抱えている場合もあるでしょう。盛岡市としてどのような対応を行っているかお答えください。

 2002年頃から高校中退は数、率とも劇的に減少しています。理由として私立通信制高校の増加が上げられますが、それと同時に東京都のチャレンジスクールやエンカレッジスクール、沖縄県の高等学校生徒就学支援センターなど、自治体が高校中退を防ぐための取組みを始めたことも上げられます。このような取組みを県と連携して行う必要があるかと思いますがご意見をお聞かせください。

 さて、次にアクティブ・ラーニングについて伺います。

 2015年9月、中央教育審議会の資料「新しい学習指導要領が目指す姿」の中にアクティブ・ラーニングの導入を示唆する内容がありました。アクティブ・ラーニングとは、教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称で、発見学習、問題解決学習、体験学習、調査 学習等が含まれ、その方法としては、グループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等が上げられます。新しい学習指導要領にアクティブ・ラーニングが取り入れられるであろうという報道に接した時に、私はとても複雑な気持ちになりました。この考え方は2002年の学習指導要領で示され、その後批判された「ゆとり教育」の根幹だったからです。私は総合学習の導入に至る考え方を支持しておりますので「結局はそういう事なんじゃないの!」と思ったわけです。

 話は飛びますが、10月4日、私はマイケル・オズボーンオックスフォード大学准教授の話を聴きました。2014年に「現在人間が行っている仕事の約半分がAIに置き換えられる」という予測を発表した、人工知能(AI)の研究家です。ビッグデータの活用とセンサーの認識能力の飛躍的な進歩により、今まで機械では不可能だった、例えばコミュケーションを必要とするサービス業なども次々とロボットで可能になって来ています。「AIが取って代われない仕事は芸術などのクリエイティブな仕事」とのことでした。

 国立情報学研究所が行っていた「ロボットは東大に入れるか」というプロジェクトでは、今年、センター試験模試と東大の2次試験を想定した論述式模試に挑戦しました。その結果を受けて東大への入学は断念したものの「MARCH」「関関同立」と総称される難関私立大学も含む756大学2329学部6405学科のうち535大学1373学部3046学科で80%以上の合格率を出したそうです。この研究の中心メンバーである新井紀子教授は「AIは意味を深く理解しなくてはいけない問題が苦手。論理的に解こうとしたときの限界がある。しかし、中学生よりも、文脈を理解できないAIのほうが文章を読めているという事例があることは問題だ」という主旨の発言をしています。

 人間がAIと競っても計算の速さ・正確さ、情報量では絶対勝てません。様々な情報をより深く理解する能力や、情報の総合的な理解から新しいものを産み出す能力を強化していく必要があります。アクティブ・ラーニングに期待されている部分でしょう。マニュアル化が難しい教育方法である故に、教員に高い能力、それも今までとは異なった能力が求められると思います。今まで行われてきた総合学習に対する教育委員会の総括を示すと共に、アクティブ・ラーニング実施に向けて準備していること、するべき事のお考えをお聞かせください。

 次に主権者教育について伺います。

 今年の6月から選挙権年齢が18歳に引き下げられました。それに伴って学齢にあわせた主権者教育が行われており、2015年には市立高校で模擬選挙の実施があったことなども議会でお聞きしました。ただ、私は若干の違和感を持っています。前項でお話しいたしましたアクティブ・ラーニングを是とするのであれば「もっと自分たちの生活に身近で、具体的で、実践的な教材があるんじゃないの?」と、思っています。そう考えるに至った、少し前の私の経験からお話しします。

 とある市民団体が作品展示のイベントを開きました。子どもたちが多数来場するイベントで、来場者による投票で優秀作品を表彰する予定でした。イベントが終了し投票箱を開けてみたら、どう見ても同一人物と思える筆跡の投票が数十枚も入っているのです。1件だけではなく複数件同様のものがありました。数百人が自由に出入りするイベントで、いちいちチェックして投票用紙を配ったわけではありませんが、この事態に主催者はとても困惑しました。私はこの話を小中学校に詳しい知人にいたしました。「不正投票だ!」知人はちょっとばかり考えた後「いや、それは不正投票というのとはちょっと違うと思う」と言いました。「一人一票っていうのを知らないだけなんじゃないかな?」え、そんなことってあり得るの?と思いました。「投票というものは何の但し書きもなければ一人一票というのが原則でしょう」と言うと「今、ほとんどの小学校では児童会選挙をやらないんですよ。中学校もそうじゃないかな。中学生くらいになれば社会科の授業で選挙について解ってくると思うけれど。今、子どもたちに一番馴染みのある選挙はAKBの総選挙だから。あれは一人一票じゃないでしょう?」
 ちょっと衝撃でした。
 そこで伺いますが、盛岡市の小中学校、及び市立高校で児童会・生徒会選挙を行っていない学校はどのくらいあるのでしょうか。

 児童会・生徒会選挙を行わなくなった理由として、人気投票になってしまいがちなことや落選した子どもが傷つくということが考えられます。ひょっとしたら、いじめやからかいの原因を作ることになってしまうかもしれません。今回、私が一般質問でこの課題を取り上げるということを知った知人が、児童会選挙で落選した経験についてお話ししてくれました。次の日、学校に行きたくないと思ったくらい嫌だったそうです。しかし、そのような経験が現在のその人を形作るひとつになってもいると私は思うのです。学校の中で、自分たちの自治に関わる役員の選挙を実際に選ぶという一連の行為は、適切な指導があれば、最も有効な主権者教育の教材になり得るばかりではなく、論理的思考や民主的な議論方法、プレゼンテーションの力をつける学習にもなります。おまけに政治的中立性について、頭を悩ませる必要はほとんどありません。勿論、年間指導計画は現場の教員が作成するものですが、教育委員会として各学校における児童会・生徒会選挙の実施を推奨されるおつもりはありませんか。お考えをお聞かせください。

 さて、次にTPPについて伺います。

 トランプ次期アメリカ合衆国大統領は2017年1月20日の就任初日に環太平洋連携協定、TPPから離脱すると表明しています。日本では11月10日に承認案・関連法案が衆議院で可決され、現在は参議院で審議中ですが、合衆国離脱後に協定が予定通り発行されるのかについてもまだはっきりとは言えない状況です。また、合衆国は二国間貿易協定、FTAに切り替えを行い、さらに日本に厳しい条件を要求するのでは、とも言われており、今後の自由貿易協定の先行きは不透明です。なので、基本的な盛岡市の考えと立場だけ確認したいと思います。

 合衆国の中には、日本の医療保険などの社会保障制度が民間保険会社の収益を阻害しているという考え方があるようです。これについてご見解をお聞かせください。貿易協定が日本の制度の存続を危うくする場合、盛岡市はどのような立場で、何を行いますか。また、盛岡市の公共事業への外国籍企業の参入をどう考えますか。これについても、無条件の参入が認められた場合、盛岡市の方針についてお答えください。

 さて、次にPPP、官民パートナーシップについて伺います。

 本格的な取組みを始めてからまだ日が浅いですし、具体的な事業が決定しているわけではありませんので、本日は現在私が疑問に思っていることだけお聞きします。全員協議会でのご説明では、アセットマネジメントの結果として、盛岡市が抱えきれない施設をPPPの対象にしている印象が拭いきれません。民間企業は利益が上がらない事業は行わないと思います。給食センターは先行事例も多数あり解りますが、動物公園はどうなんだろう、と思います。対象とする施設を選定する際の考え方についてお知らせください。

答弁
市長
 伊勢志穂議員のご質間にお答え申し上げます。
 はじめに、「相対的貧困」についてでありますが、OECD (経済協力開発機構)で算定される相対的貧困率は、等価可処分所得の中央値の半分を下回る者の割合で求められるものであり、その国における貧困や経済格差の状況を示す指標であると存じております。
次に、相対的貧困に対する市民の理解を深めることについてでありますが、現在、生活困窮者支援に取り組む中で、ネットワークづくりを進めており、フードバンクによる支援や子ども食堂の活動などを通じて、「相対的貧困」に対する理解を広く市民に浸透させてまいりたいと存じます。

次に、医療保険が民間保険会社の収益を阻害しているという考え方についてですが、アメリカ合衆国内においてそのような議論があることは認識しておりますが、日本におきましては、国民すべてが病気やけがの場合に安心して医療が受けられるようにする相互扶助の精神に基づく国民皆保険体制が定着しておりますので、そもそも医療保険が民間保険会社の収益を阻害するという概念がなく、民間保険会社もその前提で商品を開発し、販売するなどの収益活動を行っているものと存じております。

 次に、仮に貿易協定において国民皆保険体制の存続を危うくする事態が生じた場合についてでありますが、ただ今申し上げた前提に基づき、皆保険制度存続のために必要な行動をとることになろうかと存じますが、具体的な行動につきましてはその状況に応じて判断することになるのではないかと存じております。

次に、TPP協定による盛岡市の公共事業への外国籍企業の参入をどう考えるかについてでありますが、現在、市の公共事業への企業の参入におきましては、地方自治法施行令の規定等に基づき、入札の参加に必要な資格を定めているほか、地元企業優先発注の方針を採っているところであります。外国企業がこの資格を有している場合は、現在も参入が可能でありますが、無条件の参入が認められた場合におきましても、これまでどおり法の規定に沿いながら、地元企業優先の発注方針により対応してまいりたいと存じます。

教育長
 ご質問にお答えいたします。
 初めに、小中学校の要保護及び準要保護の実数についてでありますが、平成28年II月1日現在、要保護は、小学校226人、中学校137人、準要保護は小学校 1,240人、中学校802人となっております。

 次に、高等学校等就学支援金の受給者数についてでありますが、平成28年11月1日現在、盛岡市立高夜におきまして全生徒数841人のうち、745人が受給しております。

 次に、就学援助費の支給ほ「まとめ支給」か、についてでありますが、就学援助費の支給時期は、原則として、学校給食費が、7、9、12月の年3回、学用品費、通学用品費、生徒会費及びPTA会費が7、9月の年2回、新入学児童生徒学用品費が、7月の年1回、就学旅行費や体育実技用具費などについては、実施又は購入後に支給しております。

 次に、小学校、中学校、市立高校で、学校運営のために保護者が負担している私費についてでありますが、子どもに学校教育を受けさせるために、保護者が負担する経費には、ドリルや副教材代、図工材料費、理科実験・観察材料費、鑑賞教室代、社会科見学バス代、「修学旅行費などがあります。平成28年度における。その総額を平均すると、小学校で月額2,254円、中学校で月額6,183円、市立高校で月額10,022円となっております。金額は、学校によって違いがあり、小学校の最低額が1,820円、最高額が3,030円、中学校の最低額が4,365円、最高額が7,680円となっております。なお、金額や内容を決定しているのは、校長であります。

 次に、学校運営での私費利用に係る、金額の上限や目的などのルールについてでありますが、市教育委員会では、「盛岡市小中学校管理運営規則」及び「盛岡市立高等学校管理運営規則」に基づき、学校において使用する教材を届出させるほか、「学校徴収金事務取扱要領」により、市立の小学校、中学校及び高等学校における学校徴収金の適正な取扱いに関し、必要な事項を定めているものであります。

 なお、金額の上限については、特に定めがないものでありますが、保護者の負担過重にならないよう配慮しているものであります。

 次に制服やクラブ活動費に係る経費などについてでありますが、要保護者に対しましては、生活保護制度により制服やクラブ活動費に係る経費が支給されております。また準要保護者に対しましては、新入学児童生徒学用品費として、制服に係る費用を支給しておりますが、クラブ活動費につきましては、現在のところ支給しておらないものであります。

 なお、今年度から、中学校のPTA会費及び生徒会費の支給を始めたところであり、クラブ活動費につきまして段階的な導入を検討してまいりたいと存じます。

 次に、学校における、これ以外の子どもの貧困対策についてでありますが、市教育委員会といたしましては、特に取り組んでおらないところであります。

 次に、貧困や虐待にかかわる教員研修の実施状況や内容についてでありますが。 各学校においては、教員が、児童生徒の成育歴、発達の状況、家庭環境[等を通して問題行動等の原因を把握する方法、問題を抱えた子どもへの対応の仕方、子どもの発達特性や適切な対応等についての、研修会を実施しております。

 その中で、貧困や虐待が背後にあると思われる場合には、教育委員会はもとより、関係機関と積極的に連携を取るなどの、対応をしているところであります。

 また、教育委員会としましても、生徒指導主事会議を毎年開催し、その中で、虐待の実態やその対応について研修を行い、虐待が疑われる事案については、即座に関係機関へ連絡するなど、適切に対応することを徹底しております。

 さらに、毎年開催している研修講座では、「いじめ・不登校対策講座」、「事例から学ぶ教育相談講座」を開設し、いじめや不登校をはじめ、問題行動の背後にある貧困や虐待、複雑な家庭環境、子どもの心身の状況等を把握する方法や、問題行動の未然防止などについて、具体的に研修しております。

 今後とも、「子どもの抱える問題」に適切に対応できるよう教員研修の充実に努めてまいりたいと存じます。

 次に、高校中退の盛岡市の状況についてでありますが、県教育委員会では、個別の高校ごとの中途退学者数については、公表しておりませんが、市立高校を含む、県内公立高校の中途退学者数は、平成27年度298人、在籍者数に占める割合は1.01%となっております。その理由につきましては、「学校生活・学業不適応」、「進路変更」が、主なものであります。また、中途退学した生徒のその後につきましては、県教育委員会では、把握していないということでありますが、別の学校に入学したり、就職したりしているものと存じております。

 次に、盛岡市としてどのような対応を行っているかについてでありますが、市立高校では、普段から、担任や教科担当教諭、部活動顧問、養護教諭等が、生徒一人一人の状況を把握し、円滑に学校生活を送ることができるように、相談に乗ったり、指導を行ったりしております。また、生徒・保護者からの相談には、担当教諭等が、適切に対応し、必要な支援を行っております。

 中途退学の意思を示した生徒がいた場合には、生徒・保護者と面談を 行い、生徒を支援 できる関係機関を紹介したり、定時制・通信制高校等の進路情報を提供したりしております。
 また、退学した後も、本人、保護者と連絡を取りながら、本人の状況把握に努め、次の進路につながる関係機関と情報交換するなど、支援を行っております。

 次ぎに、県と連携した取組みについてでありますが、今後も県教育委員会や近隣の県立高校、県の相談・支援事業所などと連携し、中途退学を防ぐ取組みや、退学後の支援に取り組んでまいりたいと存じます。

 次に、総合的な学習の時間に対する市教育委員会としての総括でありますが、総合的な学習の時間は「変化の激しい社会に対応して、児童生徒が自ら課題を見つけ、自ら学び、問題を解決する力と主体的・創造的に学習に取り組む態度を育むこと」をねらいとし、平成14年度から実施しているものであります。各学校におきましては、地域や児童生徒の実態に応じて、環境、福祉、国際理解、地域の伝統芸能などについて、学習をしております。また小中学生を対象とした。全国学力・学習状況調査における質問紙調査の結果から、自ら課題を立て調べたことを発表する学習活動への取組に対する意識は、全国よりも高い傾向が見られるなど、総合的な学習の時間の活動が、適切に実施されていると、とらえております。

 次に、アクティブ・ラーニング実施に向けた取組についてでありますが、アクティブ・ラーニングについては、文部科学省が、「子供たちが見通しを持って取り組む主体的な学び」、「自らの考えを広げ深めるための他者との対話的な学び」、「問題発見や解決を念頭に置いた深い学び」である、と示しております。市教育委員会が、現在、各学校に対し、授業の改善の視点として「学習課題を把握し、見通しをもつ活動」、「自分の考えを持ち、しゅたいてき・協働的に関わる、学び合う活動」、「学習への成就感・達成感・自己の変容の自覚を図る振り返る活動」を示し、授業の改善に取り組んでいるところでありますが、このことは、アクティブ・ラーニングの趣旨と重なるものであります。

 市教育委員会といたしましては、現在 取り組んおります授業の改善を、今後も推進するとともに国の動向を踏まえながら、適切に対応し、新しい学習指導要領の実施に備えてまいりたいと存じます。

 次に盛岡市の小中学校、及び市立高校で、児童会・生徒会選挙を行っていない学校数についてでありますが、小学校につきましては、42校が実施しておらず、中学校、市立高校につきましては実施していない学校は、ないものであります。

 次に、教育委員会が、児童会・生徒会選挙の実施を推奨することについてでありますが、児童会・生徒会活動はよりよい生活を築くために集団としての意見をまとめる話し合いや、自分たちできまりをつくって守る活動等、主権者としての資質・能力の育成に資するものであり、大切な活動であります。

 児童会・生徒会の役員選出につきましては、小・中・高等学校の発達段階の違いもありますので、各学校においては、学習指導要領に基づくとともに、児童生徒の状況を踏まえながら、行っているものであり、教育委員会といたしましては、各学校が主体的に判断すべきものと捉えております。
 以上、ご質問にお答えしました。

保健福社部長
 生活保護の水準以下で暮らしている方が、生活保護制度を利用しない理由についてでありますが、市において、生活保護の窓口に相談に来所した中で申請に至らないケースとしては、生活保護の要件である資産を手放すことをためらう場合が多い状況となっております。

 次に、生活保護世帯の自家用車の所有についてでありますが、平成28年10月末現在で、勤務先や親族等の車を借用する場合を除いて、保有を認めている世帯は17世帯、処分を保留している世帯は5世帯となっております。

 保有を認める条件としては、事業用として使用する場合、障がい者が通勤、通院、通所、通学に使用する場合、公共交通機関の利用が著しく困難な地域に居住しているか。あるい いは公共交通機関の利用が著しく困難な地域に勤務している者が通勤用として使用する場合があります。いずれの場合も自動車の処分価値が小さく、維持費を捻出できることなどが要件となっており、通院についてはタクシー利用との経費比較などにより判断しております。

 一方、生活用品としての自動車保有については、国からの通知により現段階では保有が認められていないところであります。

 また、保護開始時に失業や傷病により就労を中断している場合は、おおむね6か月以内に就労によって保護から自立することが確実に見込まれる者について、処分指導を保留することとしております。

 次に 盛岡市の子どもの貧困の現状と県立大学との共同研究についてでありますが、現在、アンケート調査結果の単純集計が終了したところであります。

 アンケートの設問が当初の予定より多くなりましたことや、自由記載欄へ多くの記載を頂きましたことなどから、集計や回答の精査に時間を要し、未整理の部分があるため、県立大学からは、まだ全体の結果の公表は控えて欲しい旨の要請を受けているところであります。

 数値が確定したアンケートの単純集計結果をみますと、回答いただいた児童扶養手当受給資格を持ちます世帯のうちの母子世帯1,173件の状況につきましては、就労では91.6%の母親が就業しており、平成23年度全国母子世帯調査結果の80.6%を上回っておりますし、雇用形態では、非正規雇用が53%で、全国調査の52%とほぼ同じ状況となっております。

 また、夜間勤務をしている割合は57.6%であり、子どもと過ごす時間が制約されている状況となっております。

 今後、県立大学において、専門的な見地から分析を進めることとしており、その結果を踏まえ、子どもの貧困の現状を把握するとともに、必要とされる施策につなげてまいりたいと存じます。

 次ぎに、生活困窮者自立支援法に基づく学習支援事業のうち、委託実施している学習会への中学生の参加実績についてでありますが、平成27年度は31人の参加でしたが、今年度は11月末現在50人と増加しており、今後も増加を見込んでいるところであります。

 参加率につきましては、生活困窮者の捉え方の基準が定義されていないことから算出しておらないところです。また、参加の傾向といたしましては、就学援助支給承認世帯、児童扶養手当受給世帯などの生活困窮世帯の中学生が多く、生活保護受給世帯は昨年同様少ない状況にありますが。大学生ボランティア等の指導を受けながら、希望する高校への進学を目指し、学習に励んでおります。

 次に、学習支援事業の対象者を小学生まで広げることについてでありますが、現状では、希望する高校への進学のため、まずは開催回数を増やすことを優先課題と捉えております。今後、他自治体の実施状況等も参考にしながら、対象年齢の拡大や、開催場所を増やすことについて研究してまいりたいと存じます。

 次に、支援を要する学齢期の子どもの引継ぎについてでありますが、小学校入学時には保育所や幼稚園等から小学校へ、中学校・高等学校入学時には出身学校から進学先の学校へ、ケース会議や文書などにより、引継ぎが行われております。

 特に、虐待などのある場合は、市の担当部署や岩手県児童相談所を始め、学校、福祉、医療、保健等の機関により構成される盛岡市要保護児童対策地域協議会のケース検討会議において、情報交換や支援内容の協議を行っており、進学の際には、必要に応じて進学先 の学校にもケース検討会議に加わっていただくなど情報提供を行い、各機関が運携し、切れ目のない支援が行われるよう努めております。

 次に、引継ぎが必要とされる子どもの人数についてでありますが、盛岡市要保護児童対策地域協議会で管理しているケースのうち、平成28年度に小学校に進学した子どもの人数は8人、中学校に進学した子どもの人数は8人、高等学校に進学した子どもの人数は17人となっております。

総務部長
 子ども未来部を新設するに至った経緯についてでありますが、子ども・子育てへの支援や青少年の健全育成に関する施策につきましては、多岐にわたっており、現在は保健福祉部や市民部を中心に、各部署が連携して取り組んでいるところであります。

 これらの部署を再編し、市民の皆様にとって、子育てに関する窓口をわかりやすくするなど、利便性を向上させるとともに、妊娠、出産、子育てと切れ目なく安心して子育てができる環境の整備につなげるため、新たに子ども未来部を設置し、子ども・子育てなどに関する施策の多くの部分を中心的に担うこととしたものであります。

 PPPの対象とする施設を選定する際の考え方についてでありますが、国におきましては、極めて厳しい財政状況の中で、効率的かつ効果的な公共施設等の整備等を進めるとともに、新たな事業機会の創出や民間投資の喚起による経済成長を実現していくためには、公共施設等の整備等に民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用していくことが重要であり、多様なPPP/PFI手法を拡大することが必要であるとして、人口20万人以上の地方公共団体等に対し、一定規模以上で民間の資金とノウハウの活用が効率的・効果的な事業については、多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討する仕組みの構築を要請しているところであります。

 具体的には、事業費の総額が10億円以上の公共施設整備事業、及び単年度の事業費が1億円以上の公共施設整備事業が、PPP/PFI手法導入を優先的に検討する対象として想定しているものであり、比較的規模の大きな事業を対象とすることにより、公的負担の抑制と地域における事業機会の創出等が図られるものと考えております。


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