いせ志穂 トップページへトピックス一覧

 暮らしやすい街をつくるためには
 第二イオン出店に対してどうするべきなのか

 不景気だからこそ広がる格差。前潟イオンの影響で地元商店が苦戦する中、本宮地区に新たなイオンモールの出店が予定されており、盛岡のまちづくりが壊滅的な打撃を受ける可能性があります。
 イオングループに属しながら閉店の方針が出された盛岡南サティのテナントでつくる『盛岡南サティ協有店会』副会長、芳賀仁さんと米澤隆夫さんに営業継続を求める理由をお聞ききしました。 (2005年11月2日 聞き手 いせ志穂 見出し・リード・コラムは編集部)

 社会的な責任を果たそうとしないサティ閉店

―まず、この間のいきさつをご説明いただけますか?

米澤(以下Yと記載):イオングループの社長である岡田元也さんがマイカルの管財人をやっているのはご存じですよね。
 9月12日に岡田さんとマイカルの社長が市役所と商工会に盛岡南サティの閉店を発表。私たちにも12日の夕方に知らされたんです。
 突然でしたので大騒ぎになったんですよ。テナントの担当に事情を聞いても「解りません。後で個別に交渉します。ご相談に応じます」と言うだけで。
 私たちは「営業の権利を一方的に奪うのははおかしい」と思いまして『閉店反対・営業継続』の署名活動を始めました。
 また、盛岡南サティ協有店会会長から岡田社長に説明会の開催要望を出し、同時に各店舗が閉店を拒否する旨の文書を内容証明で送りました。そして10月24日に説明会が行われることになったんです。それと同時に、都南地区選出の市議さん方に働きかけて市に対策委員会を設けてもらいました。

芳賀(以下Hと記載):21日に市議の皆さんや市担当の方々が皆さん「説明会を是非聞いてみたい」という事だったんです。「それならマスコミも説明会に入れちゃおう」ということで、その日の夕方にマイカルにその旨を伝えましたところ「非公開でなければ困る」と言われました。でもその内容は12日に我々にした説明と大差がないんです。ただ「3月31日に閉店の方針には変わりありません」と。
 「地域住民の方には閉店について説明しないんですか?」って聞いたんですよ。そうしたら「全く考えていないっ」という返答でした。

―地元説明会を考えない?

H:「全く考えていない」そうです。「消費者に対しては閉店セールで還元します」という話でした。我々に対しての説明会も本来はやる予定ではなかったそうです。

Y:今回の対応はびっくりしましたね。マイカルもイオングループですから。
 イオンがね、消費者っていうのをあれだけ全面に出してアピールしているなら、ここを使っていただいている消費者に対して説明する必要があると私は思うんですよ。「ここをなくす代わりにこういう対応をして、ご不便だったものをもっと利用しやすくします」とか、説明があってしかりじゃないですか。

Y:無責任だと思うんです。だって、ここを育ててくれたのはやっぱり消費者なんですから。使ってくださっている方々に、例えば「すぐそこにあるマックスバリューで対応する」でも良いじゃないですか。同じグループなんですから。そのぐらいの説明があってしかるべきだと、私も思います。

 保証金の減額に応じたのは営業継続のため
 それなのに、急に借家契約を変更

H:我々が異議申し立てをしているのは、マイカルが4年前に破綻した時に会社更生法を使いまして、我々に対して債権放棄に近いような形で保証金(入居する際の保証金。転居の場合返還されるもの)を減額しているんです。
 「営業を継続しますので皆さんどうぞご協力ください」という形で。

Y:マイカルがつぶれちゃったという事で、我々が債権者ということになるんですね。保証金は4割から6割、減らされました。高額だったところはとても大変なんです。

H:例えば補償金が3000万円ならば、返してもらえるのが1000万円とか。

―えーっ!2000万円あれば大通で開業できますよね。

Y:軽く出来ます。今だったら、店2件くらい出来るんじゃないですかね。

H:そのような大幅な債権放棄を強いられたといういきさつがありましてね。私たちは「営業継続のため協力しよう」ということでやったんですよ。
 それに、去年6月から8月まで借家契約の更新があったんですが、その時まで各テナントは入居契約した日が違うので、期限はバラバラだったんですよ。
 「地主さんとマイカルの契約が切れる期日が2008年の8月1日だから、それに合わせて皆さんの契約も統一したい」という話でしたので、当然我々は2008年の8月までは契約が更新出来ると思っていました。
 それなのに今回、一方的に契約解除通告書一枚で契約の打ち切りを言ってきたんです。しかも「何でこうなった?」と聞いても「いやー、解りません。赤字ですから」としか答えない。

Y:本当は従来の契約からこれに変える前に、借り主がどちらか選択できるんですが、そういう説明も一切ありませんでした。

H:いきなり「新しい法律に変わりましたからこちらの契約に変えてください」という説明でした。

Y:「2008年にここを地主さんに明け渡さなければならないから、時期を合わせてくれ」という風な話だったですよね。

H:「その時にまた考えましょう」と。

―それなら「2008年までは大丈夫」と思いますよね。「その時に考えましょう」と言われたのであれば。

Y:私たちは2008年にリニューアルすると思ってたんです。「その時に色々条件が変わるんだな」と。

H:店賃の値上げというか…

Y:そう!そう思っていたの。

H:新しい契約では『半年ないし一年前に契約解除の通告が出来る』という条項があるんですよ。だから9月13日に「半年前だから、3月31日に契約解除します」と言ってきた。私たちとすれば「それなら、説明された2008年って何なんだ?」と、思うわけです。

―ところで、最初にテナントさんに言った「個別に相談に応じます」というのは具体的にどういうことなんですか?

Y:説明会では「保証金は返還します」と。つまり、マイカルが会社更生法適用になった時に保証金を減らされましたが「残った分については返します」という事なんです。

―それは当たり前のこと…

Y:それしか言わない。

H:後は言わないんですよ。

Y:それ以上の、具体的な話はありませんでした。

『定期借家法』とは?
 この法律の一番の特徴は、定期借家契約をした場合、契約期限が来ると更新ができず借りた物件を無条件で明渡さなければならないということ。 『借家の回転をスムーズにすることで借家市場を活性化させれば、借家の供給が増え、家賃の低下など借家人の利益が増える』とされ、1999年12月9日『良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法案』が国会において可決。2000年3月1日から施行されている。
 しかし、東京借地借家人組合連合会によれば『制度の導入によって家賃が安くなることはなく、定期借家制度を選択した借主の55%が無条件で退去させられている』など、負の側面も大きい法律である。
 盛岡南サティのテナントに対しても、契約変更の際に必要な説明が口頭でされていなかったようだが、この法律が借家人を追い出すことに悪用されているとしたら、大変問題である。借家契約の変更を求められた時は注意が必要だ。

 盛岡南サティの閉店によって
 住民は不便を強いられ、ふりまわされる

―サティは南地域の核店舗ですよね。なくなると困るという人は多いのでは?

H:その通りです。お客さんは盛岡だけではなくて、矢巾、紫波、石鳥谷、それと宮古など沿岸の方からも来ます。市内に入るよりこっちの方が便利だということで。
 それが去年、300mも離れていないところにイオングループのマックスバリューが開店しましてね。「お互いに競争して売上げを伸ばす」と言っていたんですが…

Y:こっち(サティの生鮮売り場)の売上げが落ちますよね。

H:そうですよね。

―素人考えですが、マックスバリューにとっても良くないと思います。

Y:聞いた話では、前潟イオンは南からのお客さんの出足が悪いそうなんです。
 本宮に今度イオンモールを作りますよね。南からのお客さんを増やしたいと思えば、出来るだけ競合店を少なくしたいという考え方もあるのかもしれません。実は「本宮イオンの中にサティが入るのでは」という噂も流れています。

H:マイカルは営業成績が良いものですから、今年の12月末をもって会社更正法からはずれるそうなんです。
 岡田社長が「今後はイオンとマイカルと合同でショッピングセンターを作っていきたい」と発表しました。2店舗ないし3店舗、イオンさんの中にマイカルを入れていきたいという意向です。それが来年の秋から、という話です。

 大型店出店は雇用拡大に結びつかない

―じゃあこちらのテナントの方々も本宮イオンに行きたいという希望はないんですか?

H:そういう提案はないんです。

―サティの従業員の方は?

H:社員の人たちは行き先が決まらず不安がっています。遠方に転勤の話もあるようですが。

Y:おそらく転勤に応じる人、いないでしょう。

―それでは大型店の出店で雇用が伸びるという話は…

H:雇用って言ってもほとんどパートさんですからね。

Y:雇用というのはちゃんと身分を保障してあげることだと思うんだけれど、そうじゃないし。パートは不安定ですからね。地域の雇用を伸ばすことにはあまり結びついていないですよね。

 新規出店をやめられないイオンの事情

―前潟イオンはテナントの補償金がすごく高いそうですね。

H:売り上げが悪ければ「出ていけ」という事もある様です。今、前潟も入れ替わりが激しいでしょ。

―イオンというのは小売業より不動産部分での利益が伸びているそうですね。本来の小売りの部分が痩せてきているため、大型ショッピングセンターの開発も続けて行かざるを得ないと聞きました。

H:不動産関係の利益率が高い様ですね。
 流通を行っているのは、本社ではなくて子会社なんです。前潟のジャスコは苦戦しているみたいですよ。

Y:ここのマックスバリューだってどうなるか…
 例えばね、今のサティの場所の方が便利だと思うんですよ。閉店したら、ここににスーパーを移動した方が良いでしょ。そういうこともあるのかなぁ。彼らにしたら違約金なんて大した額ではないから。

H:ここの土地建物について調べてもらったんですが、ペーパーカンパニーみたいですよ。登記上の持ち主はみずほ信託銀行なんですけれども、そこの実益者というのが…西インド諸島にある投資顧問会社のようです。

―(爆笑)すみません…バブル時代の『地上げ屋』を連想しました。

大型ショッピングセンター建設資金の集め方
   ―不動産投資ファンドとは?―
 『ファンド(投資信託)』とは、投資家から集めた資金を一つにまとめて運用する仕組みのこと。この方式はリスクが少なく、バブル崩壊以降、投機家の格好の投機先になっている。
 2000年5月の法改正(11月より施行)によって、日本でも不動産投資ファンド(不動産を購入し、その賃貸収入や売却した際の利益を投資家へ分配すること)が可能になった。それゆえ、大型店舗開発の巨額な資金が容易に集められるという。
 グラフは2002年3月に東京証券取引所に上場した日本リテールファンド投資法人(イオン、イトーヨーカ堂などのテナントとの長期賃貸借契約が主たる投資先)の営業利益。

 大型店出店で社会的コストが増大?
 福島県では大型店出店規制条例が議決

―イオンモールが出店したことで、秋田市とか「地元商店街がなくなってしまった」という話を聞くのですが。

Y:秋田はもうめちゃめちゃですよ。

H:福島が県条例で出しましたけれど、ああいうのが出てくるのは時代の流れかもしれません。

―『商業まちづくり条例』ですね。岩手県議団も視察に行ったと報じられていました。

H:岩手でも35店舗マックスバリューを造るということですが地方にとってはきついですね。
 市議の方が言っていましたが「郊外に大型店を造ると、道路や水道などで膨大なお金がかかる。あれがもし、20年後に『売れゆきが悪くなったから』と閉店されたら大変なことだ」と。
―大型店の出店って、地元にとって、良いところが一つもない様に思います。

商業まちづくり条例 ― 福島県の例
 中心市街地の空洞化に歯止めをかけるため、郊外への出店を計画する大型店(売り場面積6000平方メートル以上)について市町村などから意見を聴き、地域の商店街に影響があるとされた場合、計画見直しを求めるという内容の条例。2005年10月13日、県議会で全会一致の可決。翌年10月1日施行予定。

 地元のまちづくりを考えていない大型店出店
 将来を考えれば、商業施設はどうあるべき

―アメリカ合衆国では『大型小売店の出店に際してはその是非を住民投票にかける』という条例を作った自治体もあるそうです。独占大型小売業は地域の文化を破壊するからというのがその理由です。

H:規制緩和の名で何でも野放しになるとすれば、ちょっと危険なことだと思います。

Y:大型店の最近の出店って何をやるか解らないから。本宮にシネコンを作れば映画館通りはまずいですよね。でも、いずれシネコンという話は出てくる可能性がありますよ。

―そうなると、今まで官民双方で作ってきた盛岡の街が、全く違うものになりますね。

Y:本来は『盛岡市としてどんな街づくりをするのか』ということが大事なんだと思うんです。それを考えた上での大型店導入だったら解りますけど、明らかに違うでしょう。

―そうですね。私は盛岡の地域それぞれに核店舗が一つと小さいスーパーがいくつかあって、車に乗らなくとも買い物が出来るというのが一番望ましい形だと思うのですが。

H:それは、うちの道又会長の考えに似ていますね。
 「盛岡市は人口29万人の細長い街だから、東西南北にそれぞれ核になるショッピングセンターを持っていて、そこで地域住民が交流をするというのがお客さんにとっても良いんじゃないか。それを真ん中に大型店をドーンと持ってくる様な偏った形にしてしまうのは地域のお客さんに対しては不便になるのではないか」と市長への陳情の際に言っていました。

―盛岡はイオンモールがなくてちょうど良い規模だと思います。

H:盛岡規模の商圏で、もう一つ巨大ショッピングセンターが出来たら前潟の売り上げは…

Y:横這いか落ちるでしょう。でも、本宮イオンにもし、サティが入るなら対象年齢の商品構成がもう少し高くなります。

H:それを狙っていますよね。

Y:ヤングからミセスまで、全部自分たちが取ろう、という考えなんでしょう。

 最終的には消費者で決める

―消費者に望む事ってありますか?

Y:消費者が一番じゃないですか。

H:そうです。

Y:もう、何やるったって消費者ですよ。消費者っていうか、庶民ですよ。普通の人。普通の人が基本じゃないですか。普通の人がものを買ったり、ものを言ったりするんだから。

―でも、消費者は新しいお店が出来たら行っちゃうんじゃないですか。そして独占が進んでしまうのではないかと…

Y:いや、一般庶民はバカじゃないから。やることがメチャメチャだったら、次はそうはいかない。

―小売業者の数がものすごく減ってしまうのじゃないかと思います。大型店が出来ることで消費者の選択の幅が広がると思っていた時期もあったんですが、今は『イオンしかなくなってしまうのでは』と。

H:
それを「経済的な戦争だからかまわない」と言っている人もいますよね。

Y:とにかく地元の小売は喰い潰す。次は自分たちのグループ企業で競わせていって、ダメな奴は落として行く。どう転んでも最終的には自分達だけが残りますからね。
 ところで、前潟は土地を買っているの?

―いいえ。本宮も賃貸です。
私は貸すなら「長期に渡って操業する」という契約をするべきだと思います。

Y:まさにその通りだ。

H:地域のお客さんのこと考えることになりますからね。

―:今後はどういう方向で?

Y:署名運動ですよね。署名は民の声ですから。今の南サティの場所で買い物が続けられるように、営業継続を求める署名にどんどんご協力いただきたいと思います。

H:我々だけでは出来ないので、色々な方にご協力いただきたいと思います。

―私も出来るだけ多くの方に実状を知らせていきたいです。 ありがとうございました。

お二人のお話を聞いて
 私が住んでいる町内にはスーパーがない。閉店してしまったのだ。高齢の方や運転できない方は本当に不便だ。  社会の高齢化と人口の減少は避けられない。次の世代を考えれば『造っては壊し』のやり方を認めてはいけない。
 矢継ぎ早に出店ができるのは大型店開発が投機の対象になっているからだという。だとすれば、大型店が増えれば増えるほど、様々な格差がさらに広がる結果になるのではないだろうか。
 大型店の出店を規制する法律はない。結局は消費者の動向で決まっていくのだ。地元商店の営業継続を願うなら、近所で買い物をすることだ。 ぜひ南サティに行き、働く人たちに「営業を続けて!」と声をかけて欲しい。

 政治を変える「市民の新党」が必要だ

衆議院選挙は自民党が過半数を超える296議席を取得し圧勝。官僚主導政治を終演させるためには、市民の利益を第一に考える新しい政党を、市民の手でつくることだと私は考えます。
衆院選の結果
 衆議院選挙は、現在の政治危機の現況である官僚主導の政治を終わらせるチャンスだったと思います。様々なごまかしを使って官僚主導の政治を温存させていこうとしている小泉政権を終わらせるために、私も選挙に取り組んだのですが、「小泉政権こそが官僚政治を終わらせようとしている」という大宣伝に負けてしまいました。

前原民主党に期待できるか
 選挙期間中「小泉政権は嫌だけれど民主党もなぁ…」という声をたくさん聞きました。前原新体制になっても、国民の評価は変わっていないと私は思います。その根本的原因は、相次ぐ不祥事ではなく、民主党が新しい日本の方向性を指し示せない事にあるのだと思います。

抜本的改革を市民の手で
 求められているのは抜本的な政治改革です。『官僚』という一部の特定の人たちが行ってきた政治を、国民が決め、国民が責任を取る政治に変えていかなれけばなりません。
 この改革は、官僚と癒着し、莫大な財政赤字を垂れ流してきた自民党にはできないこと。
 政治を変えようとする一般市民が、新しい党を作っていく必要をひしひしと感じています。
 一緒に頑張りましょう。

 道路の「穴ぼこ」など不具合を教えてください

 道路の破損が目立ちます。 盛岡市では職員によるパトロールを行っていますが、全域に目が届くわけではありません。事故が起きてからでは遅い!補修が必要な部分に気づいたら、盛岡市道路管理課もしくはいせ志穂事務所までお知らせ下さい。
 その他、市政全般についてご要望をお聞きいたします。お電話・メールをお気軽に。

いせ志穂 トップページへトピックス一覧