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NPO「年輪」視察報告

視察日 2004年10月20日(水)
事業内容 ケアプラン作成・ヘルパーステーション・痴呆専用単独型デイケア
痴呆対応グループホーム・配色サービス など
所在地 〒188-0011 東京都西東京市田無町5-4-8 第一和光ビル1階
電話 0424-66-2216 FAX  0424-51-6071
ホームページ http://www.npo-fukushi.com/
視察目的 地域で高齢者を支える、という考え方からの実践を見学する。
説明者 安岡 厚子さん(理事長)
※ただし、この文章の全責任はお聞きした話をまとめたいせ志穂にあります。

1.生まれた根拠・いきさつ

「年輪」は今年で10年目。(それ以前に「バウムクーヘン」という公民館の社会教育団体として15年間の活動実績あり)
 始まりは1993年、旧田無市(注;田無市は2001年1月21日に保谷市と合併して西東京市になった)で「一人暮らし高齢者実態調査」を行ったこと。
市が新しい「老人福祉計画」を作る時期だったので、その計画を住民参加で作りたかった。高齢者福祉に熱心な他市から講師を呼んで勉強会をしたりもしたが、市はあまり調査等しないまま計画を作ろうとしていた。そこで「自分たちで市民の意見を集約できないか」と考えた。住民基本台帳を閲覧し、一人暮らしと思われる人1133人を対象に調査。うち500人から聞き取り調査が出来た。
 その結果、多かった声が「ずっとこの地域で暮らしていきたい」というもの。
 当時、旧田無市にあった高齢者介護に関する施設などは「家政婦紹介所」だけ。この街に住み続けたいと思っていても、一人で暮らしていけない状態だということが解った。
 市長と議会に「老人福祉計画は熟慮が必要」と訴え、策定を1年遅らせて、聞き取り調査の結果を計画に反映させた。
(写真は配食サービスの調理場入り口。地域の人達にも小売りしている。)

2.「最後まで地域で生きていく」ために
 
 旧田無市では、最後まで在宅で暮らす人は少ない。特に、自分の世代からこの場所で暮らし始めた新住民は、近所に親戚など頼る人がいない場合が多い。そうなると、かなりのお金を持っていないと在宅で暮らせない。
 高度経済成長に伴った人口増加と核家族化によって、高齢者夫婦の「老老介護」が急増しており、地域の「介護力」が非常に弱っていることを感じる。
 「年輪」は「地域で総合的にサポートするシステムを創ろう」という目標を掲げている。(今年度「さりげないサポートシステムに関する調査」を行った。調査結果資料有。貸出可。)そのためには「コミュニティの復活」みたいなものが必要だと考える。「年輪」の行う配色サービスは「見守り」も兼ねて行っている事業である。
 行政の側でも「ささえあいネットワーク」として、郵便局や新聞販売店等44団体と協定書を締結し、日常の業務活動の中で高齢者の異変を見つけた場合、すぐに市に連絡し高齢者の安否確認をしていく「ささえあいネットワーク」というシステムをつくっている。
(写真は後述のマンション3階にあるグループホーム。)
  
3.福祉行政について

 合併によって行政の枠は広がったが、基本的に福祉行政は、小さい単位で考えるべきだと思っている。小学校区に一つくらいの単位で「情報発信基地」が必要。また、福祉の窓口に専門職員を配置する(西東京市では実施)など、利用者側に立った情報発信がもとめられている。
 市民サイドから福祉行政に関わってきたが、最初のうちは職員と同じテーブルで話をすること自体も難しかった。「市民との協働」という事を職員に解ってもらうことは、結構大変なこと。行政の下請けになるのではなく、あくまでも市民の立場から政策提言をしていくことでしか「協働」は実現しないと思う。
(写真は後述のグループホーム台所。)

4.今後の展開

「年輪」の事務所・配食調理場・デイケアルームが1階にある賃貸マンションの3階には、3部屋をぶち抜く改造を施した痴呆対応グループホームがあり、7人が暮らしている。施設整備費はトータルで1800万円。その上の階には「年輪」のヘルパーと個人契約を結んでいる方が3人住んでいる。
 2005年3月には、ここから10分ほどの場所に、新築では初のコミュニティハイツ事業(※)を利用したマンションも建設される予定。
http://www.seniornet.ne.jp/index.htm
※コミュニティハイツとは、NPOが生活支援する、高齢者世帯向け賃貸住宅。マンションの一室にNPO事務所を設け、様々なサポートを提供する。
(写真は1階グループホーム。木の床は古い建物からの再利用材。)

5.私(いせ)の感想など

○「地域で支え合う行政システム」とはちょっと違いましたが、安岡さん達の取り組みには頭が下がりました。「行政を納得させるためには、自分たちの情報網や自分たちの施策を持っていなければならない。そして、実際にやってみせれば良い」という考え方には、激しく共感しました。

○実際、「年輪」の活動を見てみると「地域で介護する、という考え方って首都圏の方が向いているかもしれない」と思いました。居住の集積率が高いこと、交通網が整備されていることなどからです。

○盛岡でも「高齢者が郊外からまちなかに住み替えている」というニュースがここ数年伝えられています。新しいライフスタイルと同時に新しいコミュニティのあり方についても考えて行かなければならないと思いました。






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