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教育環境整備等特別委員会行政視察報告

2003.11.11(火)〜11.13(木)
11月11日(火)

盛岡駅 9:39− こまち8号 −10:22仙台駅
仙台駅10:56−仙山線快速−12:01山形駅
13:30〜山形市視察(於山形市議会) その後山形県郷土館「文翔館」見学
テーマ 
1.子どもたちを育成する環境づくりについて
(学校以外での子どもたちの受け入れ体制など)
2.少人数学級について


1.子どもたちを育成する環境づくりについて(学校以外での子どもたちの受け入れ体制など)
 公民館事業97、うち土曜日含68。
 高校生や大学生ボランティアが活動する事業9。
 特筆すべきは、山形市総合学習センター(理科教育センター)と山形大学教育学部の主催で「遊ぶ、つくる、学ぶ おもしろ実験教室」。
 定員20〜50人で、山形大学の学生と一緒(単位が出る)に子供たちが実験を行うといったもの。(一例 12月13日土 「科学マジックに挑戦しよう−科学実験を通じて色や光の不思議な世界を体験しよう」 対象小学3年生以上、中学生)小中学生の多くは、自分たちと年齢が近い教師を好む傾向が強い、という話を以前聞きました。また、実際に教職に就く前に教育学部の生徒さんたちが、自分で適正判断するためにも良いのでは、と思いました。
 あと、児童館での放課後児童クラブとスポーツ少年団は盛岡との大きな違いを感じませんでした。

2.少人数学級について
 山形県では「教育山形さんさんプラン」で33人学級を行っています。(2002年度に小学校4年生まで、2003年度は小学校5年生を実施。2004年度は6年生を実施予定。中学生については現在検討中)
 目的は
 1.基礎基本の徹底
 2.きめ細かな指導
 3.いじめ・不登校のない学校
 このプランにより、山形市では50学級増えたそう。教室施設は原則として余裕施設を利用する事だったが、不足な学校5校に16教室増設。施設増設は国・県の補助が無いため2億2400万円の単独予算を充てて整備したそうです。
 「さんさんプラン」の前に「やまびこプラン」という「少人数指導プラン」を行っていたそうですが、少人数学級が少人数指導(クラスを少人数に分けずに、複数の教師で指導する。いわゆるチームティーチング)よりも優れていると考えられることは、クラス人数が少なくなることで生徒に目が届き「生活と学習の両方を指導しやすくなる。一人一人の子どもの状況に気づきやすい」「日常生活の中で、生活と学習が連動する」とのことでした。データが少ないので確実な現象とは言えませんが、不登校児童の減少・学力向上・欠席の減少・保健室利用の減少、という傾向が出てきているそうです。子どもの声として「わからない、教えて、と気軽に先生に聞ける」「先生にたくさん認めてもらえるようになった」「わかるようになり、勉強が楽しい」というようなものがあるそうです。


感想
 今の子どもたちと話をしたり、教師の皆さんにお話を聞いたりすると「私らが子どもの頃に比べて何と繊細なの!」と思うことが多いです。お互いもっと深いつきあいをしたいと思いながら、心の中に踏み込もうとすると傷ついてしまうので遠慮してしまうという、いわゆる「ハリネズミのジレンマ」になってしまっている子がすごく多いような気がします。
 でも本来であれば、傷ついたり傷つけたりしながら、人間関係を構築していくのが「幼年・青春時代」の特権ではないのかな?
 私は「欠落こそが知恵を生む」という考え方に賛同するものですが、多数集団であれば人間関係に躊躇してしまう若い世代が存在する現状を聞けば、やはり「少人数学級は必要だ」という結論に達してしまいます。
11月12日(水)

山形駅 8:33− つばさ106号−11:24東京駅
東京駅11:40− 中央線快速 −11:54新宿駅
新宿駅12:00− 京浜線特急 −12:14調布駅
調布駅12:14−急行相模原線−12:26京王多摩センター駅
13:30〜多摩市視察(於多摩市議会)
テーマ 
1.子どもたちを育成する環境づくりについて(学校以外での子どもたちの受け入れ体制など)
2.少人数学級について

1.子どもたちを育成する環境づくりについて(学校以外での子どもたちの受け入れ体制など)
 学童クラブについて報告します。(話が主にそれだったので)
 多摩市の学童は公設公営。1972年頃から都事業で行ってきたそうです。現在は小学校4年生までの希望者が入れます。クラブ費は月額5000円。月〜金は午後6時まで、学校休業日は午前8時〜午後6時。日曜・祝日・年末年始は休所。
 子どもの数はピーク時に比べて約半分まで落ち込んでいるのに、学童クラブへの入所希望は増えている状況です。(保育園入所希望と同じですね)
 障がい児の受け入れを実施しています。最近、ノーマライゼーションの流れを受けて、この申し込みが増える傾向があるそうですが、職員人数の問題があり各施設5人程度で手一杯。受け入れについては、集団育成になじむ・自分で通所できるなどの内規がありますが、それにガチガチに縛られているわけでもない様子でした。10人で構成される「障がい児審査会」があり、保育園からの聞き取り調査・本人との面談などを通して、職員の加配を検討するのだそうです。また、運営は「島田養育園」のケースワーカーにお願いして、循環で月1回の相談日を設けているそうです。
 統合型の学童クラブの長所
 1.障がいを持っている子の会話に進歩が見られる
 2.そのほかの子は、ノーマライゼーションを体現するように育つ
 また、大変なところ
 1.怪我の心配やトイレなど、職員の手間がかかる
 
2.少人数指導について
 東京都では少人数学級に予算配備していないこと、多摩市は学校によって単学級校とマンモス校があり、バランスが悪いこと、の二つの理由で少人数学級にはしていません。それに変わって、都が行っているチームティーチング教員の加配に加えてピアティチャーと呼ばれる臨職教師や学生ボランティアによる少人数指導を2001年から行っています。その目的は「きめ細やかな指導」
 ピアティチャーは学校の希望で配置します。障がい児介助や習熟度別教育など、学校の特徴によって配置要望の違いが出てきます。要望に添って多人数配置を行う学校もありますが、その場合、学校管理費を節約するなどの「努力」を要請するのだそう。
 これもデータが少ないと思われるので、参考資料にしかならないと思いますが、ある中学校の3年間の数学成績の推移を見ると平均点が45.9点から63.5点そして74.6点と上がっています。子どもたちの反応は「わからないとき、すぐ聞ける」「いろいろな先生に教えてもらって楽しい」「わかるまで教えてくれるのが良かった」など。
 多摩市ではADHD・LD・高機能自閉症などの軽度発達障がいの子どもたちは、原則普通学級に編入されます。教師全体にこれらの子どもたちへの理解を深めるよう「夏休み集中研修」や、専門家による事例研修などを行い指導を行っているとのこと。こういう素地があって初めて出来ることなのでしようが、これらの子どもたちにも、少人数指導は成果を上げているとのことでした。

感想
 昨日といい今日といい「学生ボランティア」ですよ。
 今「インターンシップ制」という正規職員になる前に「おためし」で仕事を行う制度がありますよね。私は学校の先生も、これをやった方がよいのではないかと思っています。子どもとつき合うのってとても大変だと思うから。彼らは決して「天使」でも「無垢」でも無いもんね。「概念としての子ども」と「現実の子ども」ってかなりのギャップがあるものだと思う。
 一旦なってしまうと教師の仕事は途中で辞めることは難しいと思います。盛岡でも考えてみるべきだと思うのですが…
 軽度発達障がいに対する多摩市の施策は立派だと思います。
11月13日(木)

新宿駅9:32−中央線快速−9:40阿佐ヶ谷駅
10:00〜11:30杉並区視察(於杉並区議会)
テーマ 
1.教育改革アクションプランについて

 (これは面白かったですよー。その面白さをうまく表現出来なくてもどかしい!)
 「杉並区教育改革アクションプラン」は一昨年に区がたてた「教育目標」「基本方針」の計画の体系化を計るため、昨年からの3カ年計画で実行すべき施策の計画目標を定めたもの。当初は学校教育と社会教育の二本立てで検討されていたが「その二つは結びつけて行われるべきだ」という考え方に基づき、統一したプランとなりました。プランの中間年である今年度には見直し作業が行われます。事業の予算措置は単年度。プランの基本になる考え方は(私なりの言葉で表せば)「共生・多様化(選択する自由)・参画」ということだと思います。
 そもそも、杉並区は「隣接する学区での学校選択制」を行っています。様々な理由で学校は選択されるのでしょうが、それによって同じ区の中で「一つの価値観に統一されない教育」が可能であるかどうか(それも文部科学省や都教委のしばりがある中で)、私は大変興味を持っています。
 以下、特徴的な(いせが興味を持った)プランの内容を書き連ねます。(ちなみにどの制度もオプションです。学校に関わることであれば自分の学校に必要と思われる制度を校長が教育委員会に要望します)
○フレッシュ補助教員制度
 多摩市で行っているピアティーチャー制度とほぼ同じ(昨日の報告をご覧下さい)
○塾講師による授業
 ずーっとではありません。確か例に挙げられた所は「年間3時間」だったと思います。
○日本語教師の派遣
 外国からの転校生で日本語日常会話の教育が必要な子どもに、国際理解センターから講師(退職校長)を派遣して日本語を教えています。大体週2回、1日2時間で、6ヶ月も教えれば覚えてしまうそうです。
○民間人校長の登用
 有名ですね。「よのなか科」の藤原和博、和田中学校校長です。
 東京都では都立高校校長の民間人登用を始めていましたが、藤原校長のような若い人を想定していなかった様で、3年間の期間限定での校長就任となりました。(2年の期間延長有り)
 杉並区としては複数名の民間出身校長を都に要請していますが、今年度は「成果を見たい」と配置なし。民間出身市長登用は、学校ごとの横並びを廃しそれぞれの個性を出すための施策ですが、そのためには「校長の人事権も都から区に移譲すべき」と都に要請を行っているそうです。
(蛇足/藤原校長は朝日新聞第2東京面に連載を持っています。興味がある方はコピーをいただきましたのでご一報下さい。ネットでも見られるか不明です。トライしてみて下さい)
○学校サポーター
 地域の「匠」から学校が教えていただく、学校運営に地域の方の力を貸していただく、といった制度。1回、2200円の有償ボランティア。
○学校コーディネーター
 学校と地域をつなぐコーディネーター。自分が執行できる予算を持っているので、授業の企画を行い校長に提案するなど出来ます。現在「拠点校」6校に配置。コーディネイトをお願いしている「推進校」は19校。昨年就任した4名は教育委員会の任命。今年の2名は公募。(NPOを含む18名・団体の応募があり、書類選考の後プレゼンテーションを行ってもらい決定した)
○学校緑化
 校庭を全部芝生化している小学校が一校あります。芝生化は子どもたちが外遊びに積極的になる効果があると言います。
 ただし管理維持が困難。実施の一校では、地域で「グリーンプロジェクト」というボランティア組織を作りサポート体制をとっている。
○杉並ブックスタート
 4ヶ月乳幼児検診を受けた子どもに「絵本や絵本を紹介した冊子が入ったバッグ」をプレゼント。昨年は3900名が受け取りました。
○土曜日学校
 地域の中で広く様々なことに挑戦・体験出来るよう、保護者や学校の意見を元に学習やスポーツの機会を提供します。地域の様々な活動との兼ね合いから、現状では「毎回開く」という訳ではない模様。
○付記
 杉並区には「ゆう杉並」という子ども自身が管理する児童館があります。今回アクションプラン策定の際に、ここの委員会(当然子ども)にも意見を聞いたのだそうです。「せっかくやってきたことですから生かしていかないと」とは当時、プラン策定を担当なさった方の談。

感想
 「やっぱり杉並って教育施策のトップランナーの一つだなー」と感じました。
 私は学校の多様化を支持しています。文科賞の一声でやれ「ゆとり」だ、「学力低下」だ、と右往左往する事自体が変だと思います。ある意味、10人教師がいればその教育は10通りあるわけだし、あって当たり前だと思います。
 杉並区に感心することは、子どもを子ども扱いしていない(内実は解らないけど、少なくとも表面上は)こと。「マイ・フェア・レディ」じゃないですが、貴婦人として扱われて初めて、人は貴婦人になると思うのです。
 杉並区の教育施策、もう少し注目していきたいと思います。

その後、はやて17号にて帰盛。(16:22盛岡駅)

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