いせ志穂 トップページへトピックス一覧

2012年9月いせ志穂一般質問と答弁

1 情報公開について

1 情報公開の意義についての市の認識
まず、情報公開についてお聞きします。
私がこの場所で初質問を行ったのが1999年6月定例会、今から13年とちょっと前の事になりますが、その時も盛岡市の情報公開について質問をいたしました。この13年間で、盛岡市は情報公開ばかりではなく、企画段階からの住民参加、いわゆるパブリックインボルブメントや、事業への市民参加である市民協働を推し進めて来ており、その方向性については評価をするものです。しかし今回、盛岡市元職員の工事詐欺・収賄事件に関する説明の中で、盛岡市の情報公開に対する姿勢に関して疑問に思ったことがあること、また、職員コンプライアンスを徹底させるために、是非行っていただきたいことがありますので質問させていただきます。
 具体的な内容に入る前に、まず、盛岡市の基本的なお考えを伺います。自治体における情報公開の意義について盛岡市の考えをお聞かせください。情報公開を行うことによってもたらされるメリットについてもどうお考えなのか、併せてお答えいただければ幸いです。

市長答弁
  伊勢議員のご質問にお答え申し上げます。
 はじめに「盛岡市としての自治体における情報公開の意義」についてですが、市における情報公開は、盛岡市情報公開条例により行われており、市の様々な活動の情報を公開することによって、公正で透明な市政の推進に役立つものと存じております。
  次に「情報公開によってもたらされるメリット」についてですが、情報公開制度は、市の説明責任を果たすとともに、市民一人ひとりに市政の現状の的確な理解と市政への参加を確保し、市民の声を市政に反映するなどのメリットがあるものと存じております。

2 情報提供のあり方

では、先にお話しいたしました疑問について伺いたいと思います。6月8日の盛岡市議会全員協議会『職員の逮捕事案について』の協議中のことです。元職員が盛岡駅青山線街路築造その2工事代金を水増しした詐欺事件については、それ以前からも他の職員の関与、あるいは黙認の有無が議論の焦点の一つになっていました。この日、聞き取りによる内部調査で「直属の上司がその事実を知っていた」といういくつかの発言があったと発表されましたが、それまで市がその事実を発表しなかったことに対して多くの議員から疑問が寄せられました。その理由を6月定例会の議事録の中から抜粋してお読みいたします。
「当初の内部調査の過程においては、捜査に関する供述についても立場によりさまざまな内容が述べられ、市としての事実の判断が困難を極めていた状況にあり、正式な調査内容の報告が出来かねていたところであります」これは、総務部長の発言です。
全協においても、定例会においても、この内容の発言を聞く度に、私は大きな違和感に襲われました。市として事実の判断がついた情報しか私たちは受け取れないのでしょうか。
盛岡市が情報を発信する前に意識的に取捨選択をしていると言うつもりはありませんが、一般的に考えれば人は自分にとって都合の悪い情報は出来るだけ公の場に晒したくないはずです。だからこそ、行政が行う情報公開は、事前の操作を廃する必要があります。また、今回の場合などは内部調査の際に職員が話した事、すべてを知りたいと私は思います。ちょっと見には関係ない様な事柄の中に、不正が見逃された理由や、再発防止のための有効なヒントが隠されていることがあるからです。その場合、私は誰の手も入っていない、他者の思惑が入る余地のない情報から、アイディアを組み立てる必要があると思います。
 市は事実と確認できない情報を発信し、それが一人歩きをすることを懸念されたのかもしれません。しかし、それを防止するために、発表しないという方法以外の対策が取れたはずです。今回の盛岡市の情報発信のやり方は『行政の仕事を点検・調査する』という議会の仕事を困難にしているようにも見えます。正直なところ『行政と議会は車の両輪』と言いながら、結局、行政は議会を信用していないのではないかと悲しくなりました。こう感じるのは私が捻くれているだけかもしれませんが。
感情的な齟齬は別にしても、提供される情報に提供側の見解や判断が入り交じることは出来得る限り避けなければならない事のはずです。情報提供に関する盛岡市の基本的な考え方をお聞かせください。また、今後も盛岡市が事実と確定した段階でしか市民への情報提供は行わない予定でしょうか

 

総務部長答弁
「情報提供に関する盛岡市の基本的な考え方」についてですが、情報の提供は情報開示請求とは異なり、請求者の請求によるのではなく、市が行政活動全般にわたる情報の提供に努めることにより、説明責任を果たそうとするものでございます。パブリックインボルブメントなどもその一つになります市、総合計画、予算など特に市民の関心の高い分野の情報については、ホームページを活用するなどして積極的な対応に努めているところであります。

総務部長答弁
次に「どのような段階で市民に情報提供するのか」ということについてでですが、市が発信する情報は、一度発信された後は、発信者として市が責任を負うものになるとともに、市民共有の情報となりますので、提供するに当たっては、適時、適切に情報を整理しなければならないものと存じております。



3 市民参加とのかかわり

 行政が情報公開を行う一番の理由は、それにメリットがあるからだと私は考えます。仕事を進めていく上で、社会の実情に会わない規定や条例、あるいは職場における慣例というものが常に生まれて来ます。残念ながらこういうものを職員個人が「おかしい」とか「このままではいけない」と思ったとしても、その個人が組織全体を動かして仕組みや慣例を変えていこうとするのは、なかなか困難な事です。2005年に施工された北山の県立盲学校前の道路工事は、正式な予算確保をせずに行われましたが、この事を知っていた職員の中には、疑問を感じたり、正規の手続きを取るべきだと考えていた職員も少なからずいたと思います。しかし、それは表面化せず、結果として盛岡駅青山線の工事での詐欺事件を未然に防ぐ、あるいはもっと早い段階で見つける事が出来なかったという結果になってしまいました。
 組織内の事なかれ主義や同調圧力が正規のやり方をねじ曲げる、これは何も自治体だけに起きることではありません。全ての組織は内部からの改革を苦手としています。だからこそ情報を公開し、外部から不備を指摘してもらって、組織における馴れ合いや非合理的な慣習を廃していく必要があるのです。市役所の外には職員以上に専門的な知識を持った市民もいます。また、徹底的な情報公開を行い続けることで、職員の間に緊張感が生まれ、事務規定の見直しや時代に合わない事務事業の廃止等を自ら行うという積極的な自己変革を生み出すという効果もあるでしょう。問題は、行政の側が市民をそのような『事業を共に行うパートナー』という視点で見ているかどうかなのです。この点について盛岡市のお考えをお聞きします。
 今回の逮捕事件を受けて、市は再発防止のためのいくつかの改革を発表されました。工事の設計変更等のホームページでの情報公開を評価します。その考え方をもう一歩進めていただきたく、二つのことをご提案いたします。
 一つは長崎県や岐阜県で行っている『公金支出情報公開』です。ホームページの検索システムにより、どの部局の職員が、いつ、どのような目的で、いくら公金支出したのかなどを市民は知ることが出来ます。これは公金支出の徹底的な透明化です。曖昧な公金支出を困難にすることによって、職員コンプライアンスは大きく向上すると思います。
 もう一つは2003年から鳥取県において片山義博前知事が行った、予算編成過程の全面公開です。予算を伴う全ての事業の予算要求額、事業概要、査定の結果とその理由をホームページで、リアルタイムに近い状況で公開することによって、市民は予算が決定する前に意見を述べることが出来ます。予算編成への市民参加が行われることで、市民ニーズを的確に捉えられる効果があり、特に、厳しい財政状況の中で、事業の優先度を決定する際、大きな指針が生まれる可能性があると考えます。そればかりではなく、予算要求と査定の理由を公表することで、要求する側にも査定をする側にも明快な説明が求められ、事業目的の明確化と職員の説明責任能力の向上が見込まれます。
職員コンプライアンスは、市民から常に見られていることによって確実に向上します。盛岡市が進めている市民協働にしても、まず行政側が胸襟を開き、市民に対して大幅な情報公開をすることによって、より建設的な意見が生まれてくると私は考えます。この観点から、二つの施策を早急に実施していただきたいのですが、お考えをお聞かせください 

総務部長答弁 
  次に「市民を『事業をともに行うパートナー』と見なしているか」についてですが、情報公開制度は、政策形成等に住民意志を反映させる仕組みの基本となるものと理解しておりますので、市の情報を市民のみなさまと共有する等、市民と市とでお互いにその役割を分担し、補完しあいながら市政を推進する『パートナー』の関係にあると存じております。

財政部長
 公的支出情報公開についてですが、現在公開している交際費及び食糧費以外の支出情報の全面公開につきましては、市民の関心の度合や公開に要する費用、公開による効果を勘案しながら研究してまいりたいと存じます。
 次に、予算編成課程の全面公開についてですが、現在、市では予算編成に当たって、 行政評価を活用した施策別予算配分方式を採用し、総合計画に掲げる41の施策について、市が実施しているアンケートに寄せられた市民の皆様の各施策に対する満足度や期待度も含めた評価結果に基づき施策の重点化を図り、さらに、まちづくり懇談会等における要望・意見なども踏まえながら、限られた財源をどの施策、どの事務事業に振り向ければ市民福祉の向上につながるかという観点で、市民の皆様の声を反映させた予算編成に努めております。
 また、予算編成課程の全面公開については、千葉市や、堺市など取り組みを行っている自治体もありますが、その公開の内容等は各市様々のようです。
 今後、公開すべき情報の内容や時期、特にリアルタイムでの公開の可能性、手法等について他市等の事例も参考にしながら研究してまいりたいと存じます。



1 生活支援について

 次に生活支援についてお聞きします。

1 社会経済状況の変化と「生活支援戦略」

私は昨年の12月定例会において、経済状況の悪化や東日本大震災の影響の元で、求められている社会保障制度についてご質問いたしました。今年に入りましてから復興事業のおかげもあり、有効求人倍率は好転しております。しかしながら、国際経済においてはEU加盟国での通貨危機、東アジアにおける景気の悪化が報道され、国内でも大手弱電メーカーのシャープが急速な経営不振に陥るなど芳しくない状況が続いています。まず、現在の景気動向についての市の見方をお聞かせください。
 リーマンショックによって露呈した経済・金融恐慌は、何度も一般質問の際にはお話ししているのでもう皆さんの耳にタコができているかもしれませんが、所得格差・資産格差の著しい増大により市場が急速に狭隘化している事が原因です。1929年にニューヨーク証券取引所での株価大暴落をきっかけとして始まった世界大恐慌の反省から、第二次世界大戦後の世界は先進国が経済面で協調する事や、発展途上国への経済・技術援助によって世界的な市場の拡大を行う事などで、極端な経済・金融危機の勃発を防いできました。しかし、80年代以降、騰貴経済に傾いていく資本の流れによって、世界は再び『富める者は富み、貧しい者はさらに貧しくなる』構造に逆戻りしてしまいました。貧富の格差の増大という根本的な原因の解消がない限り、一時的に回避出来たとしても、経済危機は繰り返し私達を襲って来るに違いありません。それも、繰り返す度に、発生するまでの期間は縮かくなり、その規模は大きくなるであろう事が容易に想像出来ます。
 昨年の労働人口に占める非正規雇用者の割合は、被災三県を除いて35.2%にも達しており、今後、リーマンショックの際と同等の雇用の危機が訪れた場合、派遣切り等によりあの時以上の社会的混乱が起きる可能性があります。
 国民生活の悪化を懸念する材料はまだあります。厚生労働省が7月に発表した『生活支援戦略』の中間まとめ基礎資料によれば、今後さらに単身世帯、高齢者単身世帯、ひとり親と子どもの世帯の増加が予測されています。
 また、年々減少してきた不登校生徒数が2010年度から増加に転じており、社会的引きこもりに陥ってしまう人たちは、増えこそすれ減る事は難しいでしょう。経済危機に限らず、何らかの困難に陥った時に頼る人がいない国民が増えています。最近よく聞く言葉に『孤立社会・無縁社会』というものがありますが、それを表す統計を厚労省が公開しています。友人、職場の同僚、その他社会団体の人々との交流が「全くない」あるいは「ほとんどない」と回答した『家族以外の人と交流のない人』の割合を国際比較すると、日本は15.3%にものぼりOECD加盟20カ国中最も高い割合でした。近い将来起きうるであろう経済・金融恐慌に対して、寄る辺ない人々がこれだけ増加しているのは、大変憂うべき事です。昭和の大恐慌の際、都会で食い詰めても、生まれ故郷に帰ったり、友人知人を頼って糊口をしのいだ人たちは少なくなかったはずですが、現在、そのような事が出来る人が一体どれだけいるでしょうか。
 たとえ、経済危機の悪影響が奇跡的に緩和できたとしても、増え続ける社会的引きこもりやニートの問題を回避する事は出来ません。最年長の人たちはもう40代になり、彼らの両親は定年退職する年代になりつつあります。年金支給額がさらに減額されるであろう事を考えれば、生活困窮に陥る世帯も考えられます。今まではあまり表面に出てこなかったが故に対応が極端に遅れている社会的引きこもりの問題も、今のままでは最悪の形で一気に顕在化するでしょう。
盛岡市が『福祉のまち』を標榜してから、おそらく40年以上が過ぎておりますが、社会保障のあり方を大きく変える時期に来ています。『生活支援戦略』の中間まとめ、また、今月初めに提出された各省庁の来年度予算要望の情報をお持ちでしたらそれらも参考にして、今後の社会保障における盛岡市の考え方、基本的な方向性についてお聞かせください

 

市長公室答弁
 景気の動向に関する市の見解についてでありますが、828日に発表された内閣府の月例経済報告によりますと、『国内の景気は、一部に弱い動きがあるものの、復興需要等を背景として緩やかに回復しつつある」と報告されております。
 また、今後におきましては、当面、世界景気減速の影響を受けるものの、復興需要等を背景に、景気回復の動きが続くものと予測されておりますが、世界景気の更なる下振れや金融資本市場の変動が、国内の景気を下押しするリスクや、国内のデフレも指摘されております。

保険福祉部長答弁
 今後の社会保障に関する盛岡市の考え方と基本的な方向についてでありますが、国では、『生活支援戦略の中間まとめ』において、改革の方向性として、経済的困窮者や社会的孤立者を早期に把握し、包括的かつ伴走型の支援体制の構築と、民間との協働による就労支援や生活支援事業を展開し、多様な就労機会の確保や居住の確保等の新たなセーフティネットの導入の検討など、生活困窮者に対する支援体系の確立と生活保護制度の見直しに、総合的に取り組むこととしております。
 これをうけて、平成25年度の国の概算要求の重点事項として、「(仮称)総合相談支援センターの設置等の生活困窮者支援モデル事業」や、「(仮称)生活保護受給者等就職実現プロジェクトの創設による就労支援」、「ひきこもりサポーターの養成・派遣」等を、「生活支援戦略」として掲げており、国の動向も併せて注視しているところであります。
 一方、社会保障の根幹をなす制度の改革では、安定した財源を確保し、持続可能な制度となるよう、所得の低い方への一定の配慮を基本としながら、給付と負担のバランスをどうとっていくかが課題となっており、今後創設される「国民会議」等で議論がなされることとなっております。
 当市においては、これまで、市民本意の市民起点による市政の推進を念頭に、「元気なまち盛岡」の実現に向けて、各種施策を総合的に推進してきたところであります。
 市基本構想では「暮らしを支える制度の充実と自立支援」を掲げ、暮らしを支える社会保障制度を充実するとともに、適正に制度を執行し、生活の自立支援を進めることが、市の社会保障に関する基本的な考え方であります。
 また、基本的な方向としては、時代の要請に即応した制度の充実が、何より重要であると考えております。
 国の生活支援戦略の中間とりまとめにもあるように、現下の人口減少、少子高齢社会の進行や、社会経済環境の変化に伴い、経済的困窮や社会的孤立の状態にある生活困窮者めぐる課題が顕在化しておりますが、これは、全国共通の課題であり、国の動向を踏まえつつ、当市においても、行政と市民、関係機関やNPO等の連携を基本としながら。重層的なセーフティネットの構築を含め、これらの課題の解決に、的確に対応してまいりたいと存じます。



2 総合的相談と寄りそい型支援の必要性

これからの暮らし・仕事支援室や復興支援センターで生活相談員の方々からお話を伺うと、生活困窮に陥る人たちは複合的な課題を抱えているケースが多いと感じます。疾病や被災、失業、借金、高齢化、離婚、社会からの孤立などの問題が絡み合っており、本人も明確にとらえられていない場合も多々あるとお聞きしました。行政から何らかの支援を受けるには、支援の内容や自分がその対象になるのかどうかが解らなければ、なかなか相談がしづらいものです。特に、生活困窮に陥ってしまった人たちは、そのこと自体を『恥』と考える傾向もあり、生活相談をためらっている間に、さらに抜き差しならない状況に追い込まれる事も少なくありません。
 先月、勉強のためにお邪魔した南アルプス市では、この4月から保健福祉部の高齢福祉・児童福祉・しょうがい福祉等の区別を廃止して福祉総合相談課を設置、相談窓口を一本化した福祉総合相談体制に取り組んでいます。これは、2003年に6町村が合併した際のアンケート調査で「市役所に行きづらい」「相談するのに何処に行ったら良いか解らない」という声が多数あった事から、職員提案により実施された改革です。これによって、主訴がはっきりしない相談や問題が複合的な相談でも、相談しやすい窓口だという認識が市民の中に広まりつつあります。庁内で相談が来るのを待つだけでなく、相談員が地域に出かけていって、深刻な生活困窮などに陥る前の予防・早期発見システムを作り出す事が次の課題だそうです。
 また、それと同時に、同じ相談員が継続的に支援を続ける、という試みも行っていました。南アルプス市では生活保護認定が降りる前、あるいは家や自家用車を所有しているために生活保護対象から外れてしまう生活困窮者を対象に、二週間に一度の食料品の現物支給を行っています。これは、勿論、生活支援のために行っている事ですが、支援品を受け取るために定期的に市役所に訪れてもらえる訳ですから、継続的な相談の時間を確保する効果もあります。福祉制度の狭間で、現時点では解決しづらい問題を抱える人たちでも、継続的な生活相談を続けながら解決方法を一緒に考えていく、所謂『寄り添い型』の支援が行われています。
 これらは非常に画期的なやり方です。今の日本の制度では雇用保険の下には『最後のセーフティネット』と呼ばれる生活保護制度しかありません。その間を埋めるものとして新たな生活支援制度が必要です。この考え方は前述いたしました『生活支援戦略』中間まとめにも記載されており、南アルプス市の取り組みは、国の制度化を先取りする意欲的なものだと思います。
 昨年の12月定例会の一般質問の中で、私はパーソナルサポート事業について触れさせていただきましたが、この南アルプス市の福祉総合相談体制はパーソナルサポート事業と非常に似通っていると感じました。盛岡市はパーソナルサポート事業のモデル地区に手を挙げる事はしなかった訳ですが、今後、厚労省は市町村に『総合的な相談窓口』を置き、包括的かつ伴走型の支援を行う事を考えているようです。ひょっとしたら、来年度にモデル地区の募集もあるかもしれません。
 たとえ国で予算化出来なかったとしても、盛岡市としての取り組みを行うべきだと思います。南アルプス市のみならず、自治体の単独事業として行っている市町村も増えていると聞きます。今後も『福祉のまち、盛岡』を発展させていこうとお考えなら、総合的相談窓口の設置を早急に行っていただきたいと思います。ご意見をお聞かせください。

 

保健福祉部長答弁
 総合的相談窓口の設置についてでありますが、現在、国においては、平成247月の「生活支援戦略(中間まとめ))において、生活困窮者の支援体系の確立に向けて、生活困窮者の早期把握のための「官民協働」による支援態勢の強化や、包括的な総合相談体制の強化、「包括的」かつ「伴走型」の支援態勢の構築について検討を進める必要があるとされております。
 また、248月に報告された「安心生活創造事業成果報告書」では、「社会的孤立を防ぐための官民協働による多様な主体との連携」や「総合相談体制の確立」が、今後重要と考えられる取り組みとしてあげられているところであります。
 現在、当市においては、複合的な相談に対応するため、各部の窓口での連携を図るとともに、情報の共有や 、必要に応じて、相談を受けた担当者が、他部局の窓口に同行するなど、取り組んでいるところであります。
 また、複合的な相談に対応するためには、何よりも人材の育成が必要不可欠であると考えておりますことから、これまでも、自殺予防対策を推進するため、、全庁的に窓口職員の研修を行っておりますし、地域においては、キーパーソンとなる民生委員に対する研修に努めているところであります。
 いずれに致しましても、「総合相談窓口」の設置は有効な手法のひとつと考えておりますが、今後、複合的な相談に的確に対応するためのあり方を検討する中での課題のひとつと捉えており、今後とも国の動向を注視するとともに、市民が相談しやすい環境づくりに、鋭意、取り組んでまいりたいと存じます。



3 生活保護制度の見直し

さて、すでに報道されておりますが、生活保護制度の見直しが検討されています。医療扶助の適正化、調査・指導権限の強化、(仮称)就労収入積立制度の検討等についてかと思いますが、それらの検討内容を解る範囲でお伝えください。
少しばかり前に、国会での質問が発端となり、芸能人の親族の生活保護受給についてマスコミが大きく取り上げ、ちょっとした騒ぎになった事がありました。あのようなバッシングが広がる事で、自治体が生活保護受給者数を抑制しようという動きにつながるのではないかと、心配です。ここ5年間の盛岡市における相談件数、申請者数、申請割合と、申請に至らなかった主な理由をお聞かせください。
また、参考までに、現行の生活保護制度で不備な点、時代に合わなくなっていると感じる点がございましたらお聞かせいただきたいと思います。 

保健福祉部長答弁
 次に、生活保護制度の見直しについてでありますが、厚生労働省では、生活困窮者対策と生活保護制度の見直しについて一体的に検討するため、平成244月に社会保障審議会に「生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会」を設置し、生活保護基準の検証・見直しや、指導等の強化、就労を促進し自立の意欲を高めるための脱却インセンティブの強化などについて検討を進めているところであり、7月には「生活支援戦略」の中間まとめが公表されたところであります。
 その中で、生活保護基準の・見直しについては、一般低所得者世帯の消費実態との比較検証を実施すること、指導等の強化については、資産・収入に関する事項に限られている 地方自治体の調査権限についての拡大を検討すること、脱却インセンティブの強化については、就労収入積立制度により、就労収入の一部を積み立てて、生活保護廃止後に還付する制度の導入を検討しており、今後とも、国の動向を注視してまいりたいと存じます。
 なお、当面の対応としては、電子レセプトを活用した重点的な点検指導などによる医療扶助の適正化や資産調査の強化により、生活保護給付の適正化を図るほか、就労や自立支援の強化を図ることとしております。
 次に、過去5年間の相談件数及び申請者数、申請割合についてでありますが、平成19年度は、相談件数が1466件、申請者数が458人、申請割合が31.7%、以下、同様に20年度は、1451件の538人で37.1%、21年度は、2053件の861人で41.9%、22年度は1936件の790人で40.8%、23年度は1734件の649人で37.4%となっております。
 次に、申請に至らなかった主な理由でありますが、統計上の処理は行っておりませんが、預貯金の取り崩しや生命保険の解約により、当面の生活が可能であると見込まれた方、親族や家族からの援助が見込まれた方、申請の意志はなく生活課題の相談で終了した方などが主な理由となっております。
 次に、現行の生活保護制度における課題等についてでありますが、現在、保護世帯が増加している中で、扶助費の4分の1が市の負担となっており、財源負担への対応が課題となっております。
 また、預貯金調査では、県内の銀行三行を除き支店単位での調査となるため、調査に時間を要することが課題となっております。
 なお、国ではこの課題の解消に向けて、金融機関の本店一括方式の導入を検討しているところです。
 また、生活保護制度に対する市民の理解を得るため、今後とも、制度に係る周知・啓発を図る必要があると考えております。




4 社会的事業所及びフードバンク等の実践から考えられる今後の生活支援のあり方

生活支援制度拡充の施策として、今、私が注目しているものが二つあります。
 一つは『社会的事業所』です。社会的事業所とは、社会的に不利な状況に置かれている方、例えばしょうがい者、難病者、社会的ひきこもり、ニート、シングルマザー、刑余者、生活保護受給者等の方々を積極的に雇用し、社会的に有用な活動に取り組む事業所のことです。これらの方々は、残念な事に一般就労の機会を得づらく、あるいは就労機会を得たとしても特有の症状・状況などから継続的な就労が困難な場合があります。一般的就労でも福祉的就労でもない『第三の就労』の場を作る事によって社会参加を促進させることが『社会的事業所』の目的です。韓国にはこれを保障する『社会的企業育成法』があり、社会的に不利な状況に置かれている方々の、経済的・社会的自立に大きく貢献していると聞きます。日本でもしょうがい者や生活困窮者の支援に取り組むNPO等の実践例がありますが、2005年には滋賀県が制度として導入しています。
 注目している二つ目は『フードバンク』です。フードバンクとは、品質には問題がないものの、賞味期限が近い、包装不備、ロット不足、野菜など規格外等で市場に流通しない、現状では廃棄してしまっている食品を、企業や生産者から寄付していただき、生活困窮者に配給する活動です。先にお話しいたしました南アルプス市での食料品の現物支給は、NPO法人山梨フードバンクとの提携の元に行われています。
 南アルプス市にお邪魔した際に、フードバンクの箱詰め作業を体験させていただきましたが、食料品が入った箱の中には、ボランティアの方々の手書きのお便りが同封されていました。支援される側の方々からお礼の手紙をいただく事も多いとのこと。そこには食料品のやりとりだけではなく、心のやりとりが生まれている事を実感しました。
 実はこの『社会的事業所』や『フードバンク』に非常によく似た活動を岩手県内で見る事が出来ます。例えば福祉バンクや生き生き牧場は『社会的事業所』の理念に近いですし、被災のため盛岡市に避難している生活困窮者に日用品や食料品の支援を行っているSAVE IWATE、あすからのくらし相談室・宮古でも日用品の支給を行っています。今後、更に必要になって来るのはこれら生活支援に関わる民間団体と行政の大きな連携を作り、支援を必要としている人たちについての情報の共有を図る事です。また、市の遊休地を農地として無料貸し出しするとか、配給品募集を企業や農協などに声がけするとか、行政が一緒に取り組めば、これらの活動は活性化し、更に大きな連携を作り出すことが出来ます。
 生活困窮者を初めとして、社会的に不利な状況に置かれている人たちにとって、仕事や給与、食品や日用品は生活する上で必要です。しかし、それと同じ位、社会が自分たちを見捨てない、無視しないという実感がとても大切なのです。この二つの取り組みは、その実感を伝えるために非常に有効だと私は考えます。盛岡市が、生活支援の新たな取り組みと、それを支える枠組みを構築する様、ご検討いただきたいのですが、お考えをお聞かせください。
 最後に、市長にお聞きします。
 リーマンショックが起き、東日本大震災が起き、私は将来に怯えています。怯えながらも、盛岡に暮らす方々の暮らしを、下世話な言い方をすれば「どうやってみんなが食べていくか」という事をずっと考えてきました。しかし、ずっと長い間解りませんでした。
 昨年の夏が過ぎた頃だったと思います。被災者の方々が「お裾分」等と言って海産物や農産物を持ってくる様になった、と聞きました。自分たちの生活も大変だろうに、と思い夫に「SAVE IWATE、被災者から、モノもらってんだって?なんて阿漕な」と言いましたら「やってもらってばっかりじゃ、心苦しくなるそうだ。解るだろ?」との返事。確かに、そうです。そういうものです。夫は続けて「それにさ、オレ、農家だったから何となく解るんだけど、野菜とか米って金換算しない人が多いんだよな。家でもいっぱい出来たら配っちゃってた。そういう感覚と同じなんじゃないかな」

これを聞いた時、気付きました。今まで貨幣経済の論理で物事を見、考えていたから、解らなくなってしまっていたのです。生産物が出せる人は生産物を出す、労働力が出せる人は労働力を出す、お金が出せる人はお金を出す。岩手県民全体でそれを上手に組み合わせる仕組み、すなわち『共助経済』システムを作り出す事が出来れば『みんなが食べていける』と思いました。
 夢の様な話だと思われるでしょうか?
 しかし、東京・大阪を筆頭とした過密都市を想像してみてください。岩手には私達を養ってくれる大いなる自然の恵みがあります。それを活かしていく人的資源もあります。『共助』が大きな力となる事は、あの震災を通してみんなが気付きました。今、この時にも、ふるさとの復興に向けて何とかしたいという努力が、もうすでに一部で始まっています。岩手県には、新しい社会の展望があると思うのです。
 『共助経済』を実現するために行政が行うべき基本は、市民参加の促進です。次に、様々なモデルケースを分析して、市民の能力を社会に還元する仕組みを構築し、その流れを促進する事です。
『共助』と共に、疲れた人、傷ついた人には『公助』すなわち社会保障を欠かす事は出来ません。これは行政がその役目の大半を負う事になるでしょう。
 今日、私は『共助』と『公助』の二つにまたがる質問と、提案をさせていただきました。社会保障と言うと厚労省、福祉部に係る課題と思われがちですが、今、お話しした様な意味で、全庁的に取り組まねばならない課題だと考えます。震災の爪痕もまだ癒えぬ中で、財政危機と政治的混乱、金融恐慌への不安が渦巻く今だからこそ、岩手の県都の長として新たな展望を切り開くその先頭に立ち、改革を行っていただきたいと望んでおります。ご意見をお聞かせください。


 

市長答弁 
 次に、岩手の県都の長として新たな展望を切り開く先頭に立ち、改革を行うことについてでありますが、「盛岡市自治体経営の指針及び実施計画」にかかげておりますとおり、少子高齢・人口減少など市を取り巻く環境が大きく変化する中、将来にわたり市民生活の質を維持・向上させていくためには、市民、町内会・自治会、NPO,企業と行政といった多様な主体が、それぞれの特性と能力を発揮しながら、相互に連携し合い。自助、共助、公助のバランスの下に、必要とされる公共サービスがじぞくてきに提供される形が望ましいものと考えております。
 このようなことから、同指針に基づき、協働のまちづくりに積極的に取り組んできており、市民との情報共有を図ることにより市政運営に市民が参画する機会を拡充するとともに、地域コミュニティにおいて、地域の多様な主体が活力を結集し、地域が必要とする社会的サービスの提供に、主体的かつ効果的に取り組めるよう地域協働の仕組みづくりを行うなど環境整備に努めております。
 また、東日本大震災の復興推進においては、ボランティア活動拠点としての「盛岡市かわいキャンプ」や、被災地から避難した方々を支援するための「もりおか復興支援センター」を開設し、多くのボランティアやNPOがこれら施設を拠点に様々な活動を行っており、共助の輪は確実に広がっているものと存じております。
 今後におきましても、市民生活に必要不可欠な基礎的な公共サービスは行政が担って行きつつ、自助、共助、公助、のバランスを取りながら、将来にわたり、豊かな市民生活を実現してまいりたいと存じます。  

保健福祉部長答弁
 市の生活支援と仕組みづくりに当たって、「社会的事業所」や「フードバンク」の取り組みを検討すべきとの琴でありますが、市では、現在、生活保護受給者を対象として、ハローワークとの連携による就労支援事業への取り組みや、長期間にわたり就労していない方等を対象に、一般就労や福祉的就労の前段階として、職場体験等事業を実施するとともに、障がい福祉の分野では、障がい福祉事業所と連携し、障がい者の販売訓練等を支援しているところであります。
 また、東日本大震災では、全国から心温まる善意を頂き、市民やNPO団体等の力添えを頂きながら、避難者や被災者の皆さんに、日用品や食料品を届けるなど、非常時におけるノウハウを一定程度蓄積することができたものと考えております。
 このノウハウを平常時にどう活用できるかについては、今後の課題でありますが、議員からご提案のあった、「社会的事業者」や「フードバンク」の取り組みは、当市において支援を必要としている方に対する取り組みを行う上で、参考事例のひとつとなるものと認識しております。
 今後、市が生活支援体制の確立に向けて取り組むに当たっては、「協働」がキーワードになるものと考えており、行政と市民、関係団体やNPO等の連携による成功事例を積み上げていくことが、結果として、生活支援を支える仕組みづくりにつながっていくものと認識しておりますので、「参加と自立」を基本としつつ、生活に困窮している方や、社会的に孤立している方を含め、すべての方が社会的に包摂される社会の実現に向けて、新たなプログラムの開発も含め、鋭意、取り組んでまいりたいと存じます。




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