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一般質問 2006.12

  • 国との関係について
    1. タウンミーティングに関わって
  • 経営責任について
  • 教育について
    1. 教育基本法
    2. 芸術教育
    3. 保護者との連携
  • 児童虐待について
  • まちづくりについて
    1. まち中居住や住みかえ
 構成の都合上、通告と異なった順番で質問させていただきます。ご了承下さい。

1. 国との関係について

 まず始めに、小泉内閣の国民対話「タウンミーティング」に関連して、国との関係について質問いたします。
 今年の9月2日、教育基本法改正などをテーマにして行われた八戸市でのタウンミーティングで、事前に内閣府が青森県教育委員会に対して、教育基本法改正に賛成する主旨の質問が行われるよう指示し、教育委員会は地元の中学校長を通じて参加者に文書で依頼したことが発覚しました。いわゆる「やらせ質問」です。県教委作成と思われる依頼文書には、具体的な発言内容だけではなく、あくまでも発言者の自発的な意見と聞こえるように、発言の仕方まで指示が書き込んであったとのことです。これらの原稿を作成したのは、内閣府に出向していた文部科学省の職員であったと内閣府は発言しています。
 教育改革タウンミーティングでのやらせ質問は、岐阜市、松山市、和歌山市、別府市でも発覚し、別府市では大分県教委職員が一般市民になりすまし賛成意見を述べていたことも明らかとなりました。
 また、本年5月に札幌市で行われた「再チャレンジタウンミーティング」において、同様のやらせ発言をするよう、北海道庁に指示を出していたこともわかりました。
 さらに、これらのやらせ発言者に対し、2001年から2004年までの間、謝礼金を払っていた事実も明るみに出ました。2002年は14回、42人、2003年は7回、15人、2004年は4回、8 人の人たちに、5000円の謝礼金を渡していたちとのこと。2001年については、謝礼金の受け渡しの事実がありましたが、資料が残っておらず詳細は不明となっています。
 さて、2001年6月17日、滝沢村、岩手県立大学を会場にして、武部農林水産大臣、竹中経済財政政策担当大臣、岸田文部科学副大臣、南野厚生労働副大臣が参加し、タウンミーティング岩手が開催されています。この開催にあたって首相官邸、及び内閣府から盛岡市に対して何らかの要請がありましたか。要請があった場合はその内容と、要請を受けた後の盛岡市の対応について詳しくご説明下さい。

-市長-
 2001年6月に開催されたタウンミーティング岩手について国から盛岡市に対して何らかの要l請があったかについてでありますが、内閣府から岩手県に登壇者の推薦依頼があり、当市には、国や県からの要請はなかったものであります。

 この様な「やらせ」によって、政府の方針を支持する人たちが多数派であるように装うことは、最悪であると私は考えます。内閣府、あるいは文科省から道・県教委、そして学校長へと、縦の命令系列で「やらせ」が指示されているのも許しがたいことです。本来、閣僚などに対する一個人の自由な意見の表明の場であると宣伝されていたタウンミーティングが、実は、政府の方針を追認するためのアリバイ工作であったことに、憤懣やるかたない気持ちであります。今回発覚した事実についての市長のご所見をお聞かせ下さい。

-市長-
 まず、国のタウンミーティングに関し発覚した事実についての私の所見でありますが、「タウンミーティング」は、大臣等政府首脳が全国の街に出かけ、積極的な国民との対話を通じて、国民が政策形成に参加する機運を盛り上げることを目的として実施されてきたものと認識しておりますが、今回明らかになったような事実があったということは、これらの目的に添ったものとはなっておらず、不適切であったと存じております。

 また、市長にお聞きしたいのは、果たして、国からのこの様な要請に対して、地方自治体は応えなければならないものなのか、という事です。地方分権の考え方に沿えば、国と地方自治体は、行っている仕事の内容が異なるだけで、対等な立場だと思うものですが、今回の報道によって明らかになっていく事実を見るにつけ、地方分権に対する国の認識は、私と大きく異なっている様です。と、すれば、同様の事が、また違った形態で行われる可能性が高いのではないでしょうか。今後、同じ種類の要請が国から行われた場合、市長はどのように対処なさるおつもりか、お聞きしたいと思います。前にもまして、教育の公正を保証する必要を感じていますので、同様の質問を教育長にもさせていただきます。

-市長-
 今後同じ種類の要請が国からあった場合に市はどのように対処するのか、についてでありますが、市民が国政に直接参加できる機会である以上、適切な協力依頼に対しては、これに応えてまいりたいと存じます。

-教育長-
  「タウンミーティング」と同様の,「質問などの要請」が,国から行われた場合,教育委員会はどのように対処するか,についてでありますが,教育委員会といたしましても,公正,公平及び透明性の観点により,適切に対処してまいります。

 最後に、谷藤市長は、市民起点の市政を提唱し、公開の場で市民の声を聞く場も設けておられますが、盛岡市の場合は、事前に、参加者に対して、市の意向に合致する様な質問・意見の依頼を行う場合があるかどうかをお聞きして、この項を終わります。

-市長-
 市民の意見を聞く場において市の意向に合致する質問・意見の依頼を行なう場合があるか、についてでありますが、市民の発言内容について市が意図的に制約したり、市の意向に添った発言を依頼するなどは、少なくとも私の就任以降はないものと存じております。

2.教育について

次に教育に関わって、いくつか質問いたします。

@教育基本法について

 始めに、現在、参議院で審議されている教育基本法の改正について質問をいたします。
 改正案には、学問の自由、個人の価値の尊重などの理念が含まれているにも関わらず、そこはかとない息苦しさを感じてしまいます。内面の成長によって形作られるべき、人それぞれの思想を、ひとつの型に押し込めようとしているのではないか、と感じてしまうのです。例えば、第5条2項にある国家の形成者としての資質を養うという義務教育の目的、第6条2項の義務教育を受ける者の規律の重視、第10条1項の家庭の責務、第13条1項の学校・家庭・地域の連携の責任など、一つ一つを取り出して見れば、実に当たり前で、真っ当なことなのですが、先にご質問いたしましたタウンミーティングのやらせ質問での、国が地方を下に置いているかのごとき姿勢を思い起こしますと、本来であれば国の責務を規定するべき教育基本法が、国民の義務を決めつけているかの様にとらえられてしまいます。
 教育基本法というものは国家が国民をしばるのではなく、国民にしばられることを約束する法律であって欲しいと考えます。たとえ選択を受けた政府であれ、過ちを犯す可能性はあります。これを改めるためには、国民が、客観的な情報の収集と相対的な判断を行わなければなりませんが、この力を養うのが教育です。政権党の思想傾向によって、方針が変わるような教育行政があってはならないと思います。この点について、教育長の御所見をお聞かせ下さい
 改正案には、17条で教育振興基本計画の策定が義務づけられています。改正案が可決されれば、地方自治体の教育計画が基本法に裏付けられることとなりますが、このことによって盛岡市の教育行政はどのように変わるのでしょうか。現在考えられる範囲で、具体的にお答えください。
 教育の場で「将来、こうあって欲しい社会」について、語り合うのは必要なことと思います。が、「こうでなければならない社会」を教えることになれば、学校での抑圧はさらに高まり、弊害が表出することとなるでしょう。もし、盛岡市で教育振興基本計画を策定するとしたら、どのような理念で策定することになりますか。教育長のお考えをお聞きします。出来るだけ、教育行政に関わっていない市民が、イメージが出来るような言葉でお答えいただけるよう期待いたします。

-教育長-
 教育基本法改正に関わって政権党の思想傾向によって,方針が変わるような教育行政であってはならないと思うが,所見はどうか,についてでありますが,これまでも,教育行政は憲法や教育基本法をはじめとした関係法令に基づいて行われてきており,これからも変わらないものと,認しております。
 次に,教育基本法改正案が,可決されれば,教育振興基本計画策定が,基本法に裏づけされることとなるが,これによって盛岡市の教育行政はどのように変わるか,についてでありますが,同法改正法実は,参議院において審議中でありますことから,その動向を見なければなりませんが,より一層,・地域の実情に応じた,教育の振興を図ることができるようになることを期待したいと思います。、いずれにいたしましても,国で策定される教育振興基本計画を参酌してまいらなければならないものと存じます。
 次に,盛岡市で教育振興基本計画を策定するとしたら,どのような理念で策定するのか,についてでありますが,盛岡市教育ビジョンに掲げる,市民の教育に対する「夢」や「願い」をこめた,めざす市民像「多くの先人が育んできた美しいふるさと盛岡を愛し,豊かな心と健やかな体を持ち,自ら学び,共に生きる未来を創る人」を基本理念とするべきであると考えております。

A芸術教育について

 芸術教育に関わって、二つの質問をいたします。

 まず、小中学校、市立高校での芸術鑑賞についてお聞きします。
 私の経験から推測いたしますに、小中学校では音楽や演劇、あるいは美術、映画などの鑑賞会が行われていることと思います。この様な芸術鑑賞は、学習指導要領に位置づけられているものなのか、それとも、各学校の判断により行われているものなのかお答えください。全ての小中学校で行われているのでしょうか。市立高校についてもお願いいたします。また、どのような芸術鑑賞を行うかについての決定はどこで行われるのでしょうか
 私は、児童が様々な芸術作品に触れる機会を、できるかぎりたくさん持つべきだと考えています。小中学校での経験は、その後の人格形成に大きな影響を与えると思うからです。中学時代、私は、作家として作品を発表していた2人の美術教師に教えてもらう幸運を得ました。すばらしい作品をつくり出す人が自分の身近にいるということが、10代の私に大きな影響をもたらし、大学で美術を学ぶきっかけとなりました。
 さて、つい先日、私は、盛岡市の学校での芸術鑑賞には、地元に住んでいる芸術家があまり採用されないという話を耳にしました。これは本当でしょうか。今年度の芸術鑑賞で各学校に地元の芸術家が招かれたのは何回なのかお答えください
 盛岡ブランド推進計画では、芸術文化体験観光の研究開発や芸術家・工芸家が暮らす街づくりを積極的に進める、としています。これに則れば、むしろ地元の芸術家を積極的に用いるべきだと考えますが、教育長の御所見をうかがいます
 また、学校での芸術鑑賞に地元芸術家を招ことに困難がありますか。あるとすれば、それはどのようなものでしょうか。お聞かせ下さい。
 思い当たるのは、教育委員会や教職員が地元に在住している芸術家をあまり知らないのではないかということです。それならば、学校と芸術家をつなぐしくみを作れば良いと思うのですがいかがでしょうか。芸術教育にご協力いただける方々に広く呼びかけて人材登録システムを作ることは可能だと思いますが、検討出来るかどうかお聞きします。
 また、県立美術館の常設展は小中学生が無料で鑑賞することが出来ますが、これを利用している学校はどのくらいありますか。郷土作家の作品も数多く展示されており、美術の授業には良い題材だと思います。授業のカリキュラムがいっぱいで、時間が取れないのであれば、長期休暇で利用する方法など工夫が出来ると思いますが、教育委員会として推奨するおつもりはありませんか

-教育長-
 芸術鑑賞の学習指導要領における位置づけについてでありますが、多くの学校におきましては、音楽鑑賞会や演劇鑑賞会などは、特別活動における「学芸的行事」として位置づけているものであり、鑑賞教室を実施するかどうか、また、その内容についての判断は、各学校においてなされているものであります。
市内の学校における干渉教室の実施状況でありますが、小学校におきましては、ほとんどの学校で「演劇鑑賞教室」や「音楽鑑賞教室」などを実施しております。中学校におきましては、約半数の学校で実施しており、市立高等学校におきましては、昨年度は「音楽鑑賞教室」を行い、今年度は「演劇鑑賞教室」を行っております
 次に、地元の芸術家が招かれた回数についてでありますが、今年度は、24回であります。
 地元の芸術家を積極的に用いるべきではないか、についてでありますが、地元の芸術家の方々と触れ合う機会は、児童生徒にとりまして、貴重な体験となるものと存じております。
 地元の芸術家を招ことの困難点と人材登録システムをつくることについてでありますが、学校においては、地元の芸術家との日程調整や、教科の目標に沿っの難しさがあると聞いております。今後は、人材登録システムの構築を含めて、地元の人材を紹介したり、学校に実践事例を紹介したりするなどして、地元の芸術家を生かす手立てについて検討してまいります。
次に、県立美術館の常設展を利用する学校についてでありますが、今年度、利用する学校は、5校であります。今後は、各学校に利用について推奨してまいります。

 中学校での読書実践についてお聞きします。
 盛岡市子ども読書活動推進計画の策定と並行して、保護者や地域の人たちが図書ボランティア活動を行っている小学校が増えています。これは、盛岡市が推奨する「開かれた学校」を実現するためにも効果的なやり方ですが、中学校でこの様な取り組みを行っているところはあるかどうか、伺いたいと思います。
 全国学校図書館協議会が毎年5月に行っている調査によりますと、近年の読書冊数は、小学生から高校生まで上昇傾向にありますが、残念ながら、年齢が上昇するにつれ、読書冊数は減少しています。大きくなるにつれて様々な活動に接する機会が増えるせいかもしれませんが、学校現場でも年齢が上がるほど、読書推進活動への力の入れ方が弱くなっているように感じられます。中学校、及び市立高校での読書推進活動の具体についてお答えください
 10代において、様々な考えに触れたり、自分を表現するための語彙を増やすために、読書は手近な方法ですので、発達段階に合わせた読書推進活動が行われるべきだと思います。花巻市には、教師が朗読を行ったり、図書委員がブックトークを行ったりしている中学校があると聞きました。盛岡でも、積極的な施策を期待するものですが、教育長のお考えをお聞かせ下さい。

-教育長-
 読書ボランティア活動の取り組みを行っている中学校についてでありますが、本年 5月1日現在の調査では1校となっております。
 次に、中学校、高等学校での読書推進活動についてでありますが、先の調査報告によりますと、朝読書など全校一斉の読書活動を実施している中学校が21校、読み聞かせ・ブックトークなどの読書活動を実施している中学校が11校、公立図書館との連携を行っている中学校が 5校と、各校では工夫しながら読書活動の推進 に取り組んでいるところであります。
 また、市立高等学校におきましては、読書週間の設定や、その取組の一環としての読書会や感想交流会などを行なっております。
 読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていて上 で欠くことのできないものであり草す。この考えに立ち、盛岡市では、平成17年3月に「盛岡市子ども読書活動推進計画」を策定し、読書活動の推進に向けた取組を進めておりますし、教育振興運動の第9次5か年計画、におきましては、市の共通目標を読書活動と設定したところであります。今後とも、読書活動を積極的に推進してまいりたいと存じます。

B保護者との連携について

 学校での教師と保護者の連携についてお聞きします。
 昨年9月に北海道で、今年10月に福岡で、いじめによる自殺があり、その後数件の誘発自殺によって大きな社会問題となっていますが、これらについての報道を見ていて、気になったことがあります。それは、教職員と保護者あるいは地域住民が対立関係でとらえられていることです。勿論、おきてしまった事に対する責任の所在をはっきりさせるのは必要ですが、この検証作業は、人と人との関係に亀裂を作るためではなく、状況を改善するために行うものです。
 教師にしても保護者にしても、学校での子ども達の様子を完璧に把握している人はいないでしょう。子ども達は成長するにつれ、相手と内容を選んで話をするようになります。だからこそ、教職員と保護者の間での情報交換が重要になってくると思います。
 30年前に比べると、教職員が保護者と接することが少なくなっているのではないでしょうか。これは、学校が努力を怠っているからではなく、当時よりも教職員が忙しくなっていることが理由のような気がします。教職員の帰宅時間はえてして遅く、休日であるはずの土曜、あるいは日曜日にも学校で仕事をする場合もあると聞きました。
重要なのはゆとりです。仕事に追われていては、保護者との情報交換ばかりか、子ども達の状況を把握するのにも困難が生じると思われますが、この点について教育長はいかがお考えでしょうか
 今後、予定されている増税や社会保障の縮小を考えると、経済格差がさらに拡大し、問題を抱える家庭が増えていくことが予想されます。学校と家庭、あるいは学校と地域コミュニティの連携がさらに求められると思うものですが、そのための時間をどのように確保できますでしょうか。私は、現在の教職員の仕事を重要度の低いものから整理すべきではないかと思います。お考えをお聞かせ下さい。また、連携のために、盛岡市が行っている、あるいは予定している施策についてお聞きいたしまして、教育に係る質問を終わります。

-教育長-
 保護者との連携についてでありますが,保護者や子どもの話をじっく りと聞きそれぞれの心を理解していくためには,教職員にゆとりが必要であると存じております。教職員の時間的,精神的なゆとりは,教育活勒にかける情熱と相まって,保護者との情報交換や子ども達の状況把握を一層確かなものにしていくものと思っております。
次に,学校と家庭,地域との連携のための時間の確保についてでありますが,これまでも学校運営のスリム化の観点から,学校行事や諸会議の精選,教育活動の重点化,教職員の業務の協働化や分担の適正化などに取り組んでまいりました。現在,市の教育委員会職員安全衛生委員会において,市内小中学校教職員の勤務時間に関する調査を実施しており,その調査結果をふまえて,教職員の多忙化の解消に努めて参りたいと存じます。
 次に,学校と家庭,地域との連携のための施策についてでありますが,基本的には各学校の地域に開かれた学校づくりにより連携が図られております。具体的には,読み聞かせボランティアによる読書活動の推進,総合的学習の時間におけるゲスト・ティチャー,スクールガードによる子どもの安全確保,地区懇談会など家庭や地域社会とともに子どもたちを育てている実践が報告されております。
全市的なり組みとしては,地域に根ざした教育振興運動があります。本年度は,読書活動を共通テーマとし,実践区ごとのテーマも設定しながら学校と家庭,地域が 一体となった取り組みが行なわれております。
 以卜,私に対するご質問にお答えいたしました。

3.経営責任について

 行政やそれに類する団体の経営責任について質問いたします。
 岐阜県の本庁や現地機関の一部の課で、旅費や食糧費などを財源にした総額17億円もの裏金があることが、7月に発覚しましたが、今月24日、県がOBの負担分としたおよそ8億7000万円について、在職当時の役職に応じて返還する事が決まりました。これによりますと、県の調査で最も責任が重いとされた梶原拓前知事は3700万円を、当時の副知事で現在は参議院議員の森元氏は1850万円を負担するとのことです。
 私は、行政機関やそれに類する団体で大きな金銭的損失が発生した際、その原因を作った個人に対して責任を問わないのは、おかしな事だと感じます。たとえ損失金を出しても、公費、つまり税金で処理されることが保証されていれば、事業の精査にも緊張感を欠くことになるでしょうし、それによって、経営責任が曖昧になる可能性もあります。
 行政、あるいはそれに類する組織の中で、個人に帰属する責任というものについて述べてきました。市長はどうお考えでしょうか。お聞かせ下さい。

-市長-
 行政あるいはそれに模する組織の中での個人に帰属する責任についてでありますが,行政等において金銭的損失が発生した場合の個人に対する責任については,法律上訴求されるベきもののほか,いわゆる道義的責任を問われるようなものについては,その内容により個々に判断されるべきものでありますが,責めを負うべきものについては,その責任を果たすべきであると考えております。

 では、具体的な事柄についてお聞きします。競馬組合に関することです。
 この2年間、直接的には岩手競馬への融資ついて、本質的には競馬事業の存廃も含めた負債の解決方法について話し合われてきました。経営不振の地方競馬の中でも、岩手競馬組合が抱える負債は大変大きいものですが、負債がここまで膨らんだ原因、そしてその責任がどこにあるのかをまず、端的にお聞かせいただきたいと思います。
 以前、市議会全員協議会で柴田前岩手競馬組合副管理者の辞職が報告された際、前副管理者への退職金支払が行われるかどうかについて質問がされました。「現在、検討中とのことです」という答弁に、不満の声が上がりました。この2年間に増やした負債の責任は、最終的には前副管理者に帰結する部分があると思いますので、私も遺憾であります。
 同じように、盛岡競馬場の建設費が1.7倍にもふくれあがった件、財政調整基金の無制限な取り崩しの件、議会の審議を通さずにパルソビルの不利な信託契約を結んだ件など、それぞれに責任を問われなければならない人がいるはずです。それをはっきりさせ、個人に対して責任を問うべきです。勿論、法的な根拠はありません。しかし、その人が自分の経営責任について自覚があれば、寄付という形で、ご協力いただけると思います。
 いかがでしょうか。市長の御所見をお聞きいたします。

-市長-
 経営責任のうち、競馬組合の負債がここまで膨らんだ原因と、この2年間に負債を増やした責任についての私の見解でありますが、累積損失増大の原因は、平成3年度以降の発売額減少化傾向と併せて盛岡競馬場建設の起債償還やテレトラック維持のための固定費が膨らんだことにより、経営を圧迫し12年度以降資金収支不足となっていることが大きな原因であると認識しております。また、こ2年間に負債が増えたことに対しての責任についてでありますが、柴田副管理者が在任中に行った業務に対して、プラス評価,、マイナス評価を加味し、退職金が支払われたというように伺っており、競馬組合議会におきましても、それ以上の責任を追及するというような意見は特に出ていないところでございます。

4.児童虐待について

 児童虐待を防止するための、各機関の連携体制についてお聞きします。
 10月14日、市内で児童虐待事件が起きました。報道によれば、以前から育児放棄による虐待が疑われていた家庭の中で起きた事件とのことです。
 児童虐待を防止するためには、保育所や幼稚園、学校、地域、行政機関の連携が何よりも重要であるとされておりますが、今回の場合はどのような支援体制が敷かれていたのかお聞かせ下さい。
 今回のように虐待が疑われる場合や将来虐待にいたる可能性の高い事例なども、児童相談所が相談や情報提供を受けたことをもって通告として受理するはずですが、今回は県の専門機関への報告がされていなかったとのことです。その理由をお聞かせ下さい。
 それぞれの事例によって、作らねばならない支援体制は異なってくると思いますが、それを判断する基準をどこにおいていますか。マニュアルや専門職員の有無も含めてお答えください。

-部長-
 児童虐待防止のための関係機関の連携による支援体制についてでありますが,今回の事例は,当初育児放棄など児童の養育上問題がある世帯として当市に相談があったものであ,児童福祉課の家庭相談員が中心となって,保育所,学校,地域の交番,民生児童委員等と連携を取りながら,支援を行ってまいったところでございます。
関係機関においては,それぞれ児童及び保護者の見守りを行うとともに,家庭相談員が家庭訪問など機会をとらえて生活上の問題等に関して相談に応ずるなど,保護者との信頼関係を築きながら支援を継続してまいったところでございます。
次に,今回の事例について県の専門機関に報告されていなかった理由についてでありますが,通常,虐待あるいはその疑い等により市に相談・通告があった場合には,その緊急度,困難度等を判断し,一時保護や心理学的判定等が必要なもの,立入調査等一定の権限行使が必要なものなど,凶難なケースにつきましては,岩手県福祉総合相談センタ一に「送致」を行い,それ以外のもので比較的軽微なものにつきましては,市の子育て支援サービスの利用等により,関係機関と連携しながら対応することとしております。
本事例につきましては,育児放棄の原因の一つと・して生活困窮の問題がうかがわれたところであり,継続的に育児負担の軽減などの支援可能との判断から,岩手県福祉総合相談センターに送致はいたしませんでしたが,問題が多岐にわたっていることもあったことから,同センターとの情報交換の中で本事例についての情報提供を行いながら,支援を継続してまいったものでございます。

次に,支援体制をつくる場合の判断基準についてでありますが,県が作成した「岩手県市町村児童家庭相談援助指針」及び「児童虐待防止ハンドブック」に基づき,個別の事例ごとに判断をし,必要な支援の内容に応じて,幅広く関係機関との連携を図り支援体制を構ととなります。
なお,現在,児童家庭相談に対応するため、,家庭相談員として児童福祉司の任用資格要件を有する2名を配置しております。

5.まちづくりについて

 最後に、まちづくりについて、居住との関係でお聞きします。
 今まで、私は、盛岡市のまちづくりの根幹である軸状都心構想に対して、懸念を表してまいりました。この構想が策定された時代は、人口増加や経済成長が当たり前の情勢でしたが、バブル景気の崩壊を期として、可処分所得の減少と、緩やかではありますが、人口減少が予測される社会が到来したからです。今後のまちづくりは、都市の拡大を抑え、今まで構築した社会資本を維持し、有効に使う手段を考えることが中心になっていくと思います
 軸状都心構想については6月定例会で「軸状とはいってもそれがいたずらに南側にずっと伸ばしていくということにはならない」というご答弁をいただいておりますので、私の基本的な認識は盛岡市と大きく違わないということを前提として、まちなか居住についてお聞きいたします。
 まちなかの定住が増加しているとのことです。6月定例会でもお話しいたしましたが、世帯数は確実に増加しています。これは、マンション建設の影響でしょう。しかし、交流人口を増やす、すなわち、中心市街地活性化という観点から見れば、城下町である盛岡市に高層マンションが乱立するのは好ましくありません。また、マンションは建て替えなどが必要になった際、所有者が複数に渡ることから、様々な問題が発生することが予測されます。現在のマンション建設は計画的なものではありません。景観という点からも、将来の地域形成という点からも、マンション建設に対するある程度の計画性、ガイドライン的なものが必要なのではないかと思います。お考えをお聞かせ下さい。
 私は、まちなかにはマンションではなく、戸建てや小規模アパートの建設を推進するべきだと考えます。まちなかの戸建てを考えた場合、一番問題なのは地価です。土地を取得すると考えた場合、一般市民にはまちなかの戸建ては高嶺の花でしょう。しかし、定期借地法を利用した場合、必要なのは保証金と家屋の建設費だけになりますので、全く不可能とは言えない金額になるのではないでしょうか。
 定期借地法はまだまだなじみのない法律ですので、知らない方もたくさんいるかと思いますが、その利用は、私が見る限り、土地に固執さえしなければ、現代の生活スタイルに合致した実用主義的なものと思われます。
 今、土地が資産たり得るのは、一部の地域だけです。持っていても資産が増えるわけではなく、売れるわけでもない土地を所有し、固定資産税を納めている人たちがそれなりの数でいるのではないでしょうか。その人達にとっても定期借地法を利用した戸建ての建設は有用であると考えます。
 今、一番欠けているのは、この様なしくみが存在するということを知らせることです。行政の立場から、定期借地法を利用したまちなか居住スタイルを研究し、市民に知らせていくことをご検討いただけないかお聞きします
 また、まちなか居住を促進する際に、何らかの政策誘導が必要だろうというお話も6月定例会でさせていただきました。富山市ではまちなか居住推進事業制度の中で、まちなかに共同住宅を建設する事業者や、宅地を取得した市民に補助を行っています。これによって、地価の安い郊外と競争力をつけ、中心市街地の定住人口を増やしていこうという試みです。この様な事業を盛岡で検討する余地はありませんでしょうか。
 今まで述べました3つの取り組みを同時並行的に行えば、野放図なマンション建設を抑止しながらも、まちなか居住を増やすことが可能になります。ご見解をお聞かせ下さい。
 次に郊外での居住についてお聞きします。
 先日、松園に住む友人宅に行った際、ずいぶん空き地や売り家が増えていることに驚きました。昨シーズンの大雪を契機に、市街地のマンションなどに移り住んだ人がいるというのは、あながち噂だけではなかったのだと実感いたしました。
 友人の話では、地域コミュニティの努力もあり、住民の減少による弊害はそれほど生まれていないようですが、このスピードで転居が続いていくとしたら、何らかの対策を考えなければならないと思いますが、どうお考えでしょうか。  
 人口減少による影響が実際に出る前に、考えられる弊害について、地域住民から情報収集し、対策を練る必要を感じます。この地域では、数年前に都市計画マスタープランのワークショップを行いましたが、新しく生まれたこの事態について、情報と意見の収集を行うべきだと思います。お考えをお聞かせ下さい。
 視点を変えれば松園地区は良い地域です。歩道は広くて安全ですし、公園の数も多く緑が豊かです。幼稚園・保育園・小中学校・そして学童クラブも充分に設置されており、ご高齢の方にとっては不便でも、子育てを行うのには絶好の場所かもしれません。つまり、ライフステージによって、居住に求めるものが違ってくるのにも関わらず、家というものが非常に大きな買い物であるが故に困難が生まれているということです。
先に述べましたように、現在は土地の資産価値は低くなってしまいました。それを考えれば、ライフステージに合わせて、もっと気軽に住み替えが出来るようになしくみを作れれば良いのではないかと思うものです。
 本来であれば、住み替えの仲介は民間起業の仕事ですが残念なことに、この仲介によって利益を出すのは難しいと考えられます。行政施策として何らかの検討が出来ないかどうかお聞きいたしまして、私の質問を終わります。

-部長-
 まちづくりについてのご質問でございますが,初めに,中心市街地におけるマンシに対する,ある程度の計画性やガイドライン的なものが必要ではないか。また.まちなかにマンションではなく,戸建てや小規模アパートの建設を推進するべきであり,定期借地法を利用したまちなか居住スタイルを研究し,市民に知らせていくべき,とのご質問でございますが,資産価値を高める手法として土地の高度利用が図られ,中心市街地における人口・世帯の増加や活性化には,マンション供給も大きな要因であるものと認識いたしており,今後の推移を注視して参りたいと存じております。また,定期借地法に閲しましては,民間市場の中で「法」を活用した供給が行われ,市民の関心も高くなりつつありますことから,機会を捉えて,定期借地権制度の普及や周知に努めて参りいと存じます

 次に,まちなか居住促進のため,富山市におけるまちなか居住推進事業のような制度を検討する余地はないかとのご質問でございますが,ご案内のとおり,富山市では市の単独事業として,都心地区に住宅や共同住宅を建設する事業者及び個人に建設費の一部補助を行っておりますが,当市はまちなかの世帯数が増加しておりますことから,このような補助制度を導入する予定はございませんのでご理解賜りたいと存じます。
次に,松園地区の人口減少による弊害が起きる前に,地域住民からの情報と意見の収集を行うべきとのご質問でございますが,郊外ニュータウンにおける人口の空洞化につきましては,全国で同様の問題が発生しており,その大きな原因は少子高齢化と言われております。住環境の整備だけでは人口減少の歯止めとはならない現実から,あらゆる分野で,機会を捉えて,「住みよい・住みたいまち」とするための情報と意見の収集を行うべきと考えております。
次に,ライフステージに合わせて,もっと気軽に住み替えができるような仕組みを行政施策として検討することができないか,とのご質ございますが,家族構成や所得などの変化,また,職場や学校など,個々の状況の変化を背景として「住み替え」を考えますと,売る側と買う側が,双方理解と納得をするための情報の質と量が重要かと存じます。そのため「住宅性能保証制度」や「既存住宅保証制度」「要援護高齢者等住宅改造費補助事業」など国・県・市の各種制度の普及促進とP Rに一層努めて参りたいとじます。

2006.12.8

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