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寄稿−9条に今、新しい行動を問いたい−

 真っ先に言っておきたいのですが、50年前の「9条」解釈ではなく、9条に今、新しい行動を問いたいのです。廃墟の中軍の一兵も持たない国民が訴えた9条は虚空の願望でした。半世紀が経ち、日本も世界も変わり、日本は世界2位のGNP、2位の軍事費大国となりました。世界も、アメリカの優越支配はイラクの難渋で変貌を見せているこの時「戦争をしない国、日本」は「戦争をする国」に変わるつもりなのでしょうか?国会内はすでに改憲勢力が9割です。05年へ手続きがこの間にも進んでいます。

「戦争をしない国・日本」の道をあらためて選びたい

 ここで私は断固として「戦争をしない国・日本」の道をあらためて選びたいのです。それは「9条」を高らかに内外に掲げ、それを具体的な政策で実行することではないでしょうか。
 併せて言わせて頂ければ、私は嫌米派ではありません。また無論、憲法を不磨の大典として絶対視するものでもありません。環境権や国際貢献などは半世紀前に想定していなかった条項の加筆などは検討に値するでしょう。だがそれを口実にする9条抹殺へのもくろみを警戒しなければならない状況になっています。特に私が憂慮するのはすでにマスコミを覆う危うい風潮でです。イラク派兵以外に国際貢献はないとする強弁が横行し他を異論として斥けてます。迎合の学者、評論家の横暴も目に余ります。一次、二次大戦に世界平和連帯の労働団体も結局自国の戦争に協力しました。同じことが「連合」に今起きています。営々として築いた戦後民主主義を失ってなるものかというのが今の心境です。



 かつての平和勢力は、「護憲、護憲」と経文を唱えるが如くで政策化を怠ってきました。私が今言う9条を貫くという論は決して従来のような「守り」ではなく、日本平和立国の「攻め」の積極姿勢です。9条を掲げることによって行う具体的な政策を簡単に書くと、1、対米関係の対等修正。2、アジア関係の新展開。3、それを推進する国内世論の多数派形成です。

1、対米関係の対等修正。

 安全保障政策に絶対はないはずなのです。だから私の論である「9条を貫く」と唱える道も、「歯止め」と「前進」の両面を持ちます。小泉首相は「日米同盟が何より大事」と言っております。国民は、何となく反対しきれない気持と併せて少し行き過ぎではないかとも感じているのが本心ではないのでしょうか。その十字路に九条を据えたいです。
 不平等の日米地位協定の改訂、東京23区の1・6倍にも及ぶ米軍基地や米軍の削減は、今やごく当然であるべきで、ドイツは93年の改訂にて駐留米軍16万を4万台にしたアメリカは、独英伊の米軍29万を9万に減らしています。日本は40年間、何も変ってません。対米関係改善のもう一つは、日米自由貿易協定の締結です。貿易立国である日本にとって、アメリカとの関係が軍事同盟だけというのは極めておかしい話ですし、第2にアジア諸国に向かって9条を積極的に新しい連帯のメッセージとすることが必要ではないのでしょうか。

2、アジア関係の新展開。

 強大な自衛隊へのアジア諸国の警戒は根強いです。ミサイル防衛網の導入(2003年12月19日MDシステム導入発表、導入費、維持管理費で1兆円を越える)に当たり、官房長官がわざわざアジア諸国向け談話を出さなければならないところに見てとれます。平和の日本への信頼の中で、発言力を増すこれらの国と経済、安全保障の関係を深める時と考えます。12月に東京で開かれたASEAN首脳会議において、小泉首相は、長く放置していた「東南アジア有効協力条約」に加入を表明しました。
 遅きに過ぎましたが、これは評価したいです。安保面ではAPECやASEAN地域フォーラムへの参加、北朝鮮問題の6か国協議を北東アジア安保フォーラムへ常設化をはかるべきと考えます、第3に9条を軸に国民世論の成熟をはかることです。
 9条を考えることは世界の中の日本を考えることです。ここで特に着目すべきはアメリカとアジアの大きな変化です。すでに累積2000億ドルの戦費にあえぐアメリカは、年間1兆ドルの双子の赤字に転落する状況です。世界の資金を1国に集めて過剰消費やマネーゲームに酔った「アメリカ」の世紀は終ったと思います。中国の伸長は著しい。日本の輸入に占める中国からの輸入はアメリカからの輸入を上回りましたし、アメリカの対中貿易も、対日貿易を凌駕しつつあります。
 これを見てもアメリカよりもアジア重視でいくべきで、テロとミサイルだけを語っている日本であってはならないし世界を動かすのは決して力だけではないと断言したいです。それを示すのが9条であり、日本の役割で、今や日本の実力はその水準にあると思います。

3、それを推進する国内世論の多数派形成

 国会やマスコミは、自衛隊員に危険があるかどうかという議論に終始しているのは間違っています。両論とも「危険がなければ派遣すべし」では違いはありません。元々危険がなければ自衛隊派遣の必要はありません。民間人でも可能です。実は、自衛隊派遣そのものが目的なのだと考えます。これによってアメリカとの同盟責任を果たすだけでなく、日本は集団自衛権を列国の前で行使し、自衛隊は国際的に「軍隊」と認知され、イラクに掲げる日章旗は、日本国軍進駐の布告になるのです。
 次に、イラク出兵を分岐点とするのも誤りで、98年のガイドライン改訂からであり、ブッシュのイラク戦終結宣言の二週間後03年5月15日の有事関連法の成立で、日本の軍事体制は法的に変わっています。この時、日本を「戦争をする国」にすることに9割も賛成した議員達が、今、イラクの危険度だけを論じるのは空虚にすぎます。
 東大の田中明彦教授は、果たして集団自衛権は憲法違反か?と言われております。しかも憲法9条のどこに集団自衛権は行使できないと書いてあるか、内閣法制局は、日本は集団自衛権を当然保持してますが、9条があるから行使できないと言う、保持していて行使できない権利などがあるのかと思いますし、私は、「保持していて行使できない」のがおかしいのではなく、9条が集団自衛権を認めていると、強弁するのが、おかしいのであって、現憲法で他国のための軍事力行使が許されるはずはないと考えます。
 田中教授は、また、9条が放棄した「国権の発動たる戦争と武力による威嚇または武力の行使」はイラク復興支援活動については適用されないと言う。確かに、50年前の9条はこのような事態は想定していない。ならば多くの国民が9条を「戦争をしない日本」の指針として、50年歩んできた立場で憲法を補完し、集団自衛権に踏み込むべきではないとすることこそが妥当ではないか?

 「自衛隊が行かないと日本は国際的に孤立する」という論に反論します。

第一に自衛隊派兵は、明白にアメリカ軍の軍事的補完なのです。
 現在イラクの米軍は13万1600人。米国以外では31か国2万4000人。この内、米軍の4個師団が1月から5月にかけて別の3個師団と交代するとの事で、テロに悩む米軍は、1個師団の減る分を含めて穴埋めが必要になります。ところが、戦況を見て韓国が追加出兵を渋り、1万人派遣を予定していたトルコも中止、インド、パキスタンも来ない事になりました。首相答弁が、自衛隊機による米軍の武器輸送を認めたことも武力補完であることを裏書してるのではないのでしょうか。表面の復興支援論で、イラク派兵の実態を糊塗してはいけないと考えます。
第二に、「金を出すだけでは」の虚偽の情報操作を正さなければなりません。
 私が畏敬する三井物産戦略研究所の寺島実郎氏は、「長い海外経験で、平和憲法の理念を基に日本は武力をもって関与しない国であることを語り無責任な国と非難された覚えは全くない」と講演などでいつも話されています。いったい、日本を「金だけ出して汗を流さない国」という非難はどこからくるか具体的に聞きたいものです。イラクに一兵も送っていない独仏露中から文句がくるはずはないのです。対米一辺倒の国連大使だった波多野、小和田という面々がことあるごとに「湾岸戦争の時、金だけ出してと言われ涙が出るほど悔しかった」という相手はアメリカだけです。そのアメリカに、日本が払った金高は莫大である。8・11以来湾岸、アフガンの後方支援で10兆超、すでにイラク戦争にも50億ドルの約束、在日米軍負担は冷戦後の10数年で約8兆円、この数字を見ても自虐的になる理由は全くないのは明白です。
 「民主と愛国」論で大佛次郎賞の小熊英二氏の講演での言葉が耳に残っています。「戦後思想の最大の弱点は戦争体験を持たない世代に共有される言葉を創れなかったことだ」一種無惨な心象の中で、「9条を貫く」と宣言し、このホームページの中で異論、反論、賛同の方々と議論し燃焼しきっていく中から、その言葉を見つけだすことが出来るのではないのでしょうか?そうならば悔いはないと私は思っております。

by H



「寄稿」のページを新設しました

 今、日本は大きな転換点を迎えていると思います。
 国家財政・地方財政は空前の財政危機、行財政構造改革の必要が叫ばれているにも関わらず改革は一向に進みません。一方で社会保障を初めとする国民生活には、財政危機のしわ寄せが押しつけられています。
 同時に、日本の国家安全保障の問題や、それに伴った憲法改正が、国会で討議されています。しかし、イラクへの自衛隊派遣に関する国会討論を見ていると、政府の答弁は誠実なものではなく、果たして国民の意向をくんだ討論になっているのか、はなはだ疑わしいものです。
 私は以上の問題は、もっと国民討議を活発にした上で決定されるものだと考えています。
 このHPにも私たちの意見を載せるだけではなく、いろいろな方の意見をご紹介することで、皆さんの議論を進める上での一助になればと思いました。

「寄稿」のお約束

 ここに掲載していく意見は、私たちの意見と全く同じものではありません。あくまでも文章を寄せていただいた方のご意見です。
 寄稿は出来る限り多くの方からお寄せいただきたいと考えておりますが、インターネットという媒体であることから、どうしてもある種の約束事が必要であると考えました。
 そこで「寄稿」ページ新設の上で、若干の約束事をお願いしたいと思います。

1.お互いに無責任な関係にならないため、寄稿をお寄せいただく方は、いせかHP管理者にご連絡先などをお教えください。可能な限りお会いして、お話しさせていただくようにします。

2.このHPの「新しい市民の党を」のページに、私たちの基本方針が掲載されています。この基本方針と、大きく考え方が違う方の寄稿は掲載をお断りする場合があります。

3.このHPの「掲示板」にもありますが、他人をおとしこめる悪意ある内容や事実と異なった記載のある文章は寄稿者に訂正をお願いいたします。場合によっては掲載をお断りする事があります。

4.見出しなどをHP編集局で付けさせていただく場合があります。

5.以上、寄稿をお寄せいただいた方とHP編集局の間で、何度かのやりとりを経た後にアップさせていただきます。

6.寄稿に対する感想などは掲示板に書き込んでいただいて結構です。長文の場合は以上の手続きを経た後に「寄稿」ページに掲載したいと思いますが、同じ方が何度も同じ課題でやりとりをし合う状況は避けたいと思いますので、ご配慮下さい。


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